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訃報。ChessやCadetというシカゴの名門レーベルで活躍したアレンジャー/プロデューサー/ベース奏者のリチャード・エヴァンスが、最近になって逝去していたことが分かった。享年81 or 82歳。生まれは南部アラバマで、子供の頃にシカゴへ移住。最近はボストンで教職に就き、音楽教授を務めていたらしい。

かの地に於いては、50年代後半からジャズとソウルふた股を掛けて活動。サン・ラのメンバーとなった他、ラムゼイ・ルイス、スタン・ゲッツ、ジェリー・バトラー、マリーナ・ショウ、ダニー・ハサウェイ、テリー・キャリア、アーマッド・ジャマル、リロイ・ハトソン、ナタリー・コール、ピーボ・ブライソン、ロッキー・ロビンス…等など、数多くの作品に関わってきた。Chess時代には、The Soulful Stringsというイージー・リスニング・プロジェクトを主導し、数枚のアルバムを発表。リーダー作も散発的に出している。

当ブログ的に抑えておきたいのは、まず72年にAtlanticから出した『DEALING ITH HARD TIMES』。これは、マーヴィン・ゲイやブッカー・T・ジョーンズ、アイザック・ヘイズ、バート・バカラックらのカヴァーに自作曲を加えたメロウなファンク・インスト作で、ギターは全編、盟友フィル・アップチャーチだ。

そしてもう1枚は、トミー・リピューマがA&M傘下に興したHorizonレーベル発の79年作『RICHARD EVANS』(上掲)。何やらアブないアートワークだが、これがまさにフロア・ユースに適した内容で、路線としてはクロスオーヴァー指向のポップ・ソウル/ファンク・アルバムとなる。リンダ・ウィリアムスのスキャットが炸裂する<Capricorn Rising>は、ブラジリアン・フレイヴァーを宿した悶絶フロア・チューンとしてレア・グルーヴ・シーンで再評価。楽し気な<Do-Re-Mi-For Soul(ドレミファ・ソウル)>やピーボのカヴァー<Feel The Fire>では、エディ・ハリスのサックスをフィーチャーした。<Windy City>なる愛情いっぱいのシティ・ソウル・チューンや<Burning Spear>に参加しているのは、最近クレオール・ストリーム・ミュージックから再発されて一部で賞賛されたケニー・マン with リキッド・プレジャーのケニー・マン(kyd)その人らしい。タワー・オブ・パワーをゲストに迎えた<Educated Funk>なんて曲も入っている。自分でプロデュースしたアーティストたちを巧くキャスティングした、いわばクインシー・ジョーンズ状態の作品なのだ。

現地の音楽シーンでは、ダニー・ハザウェイやアース・ウインド&ファイアーのプロデューサー:チャールズ・ステップニーを育てた名翁として知られるエヴァンス。ところが日本では、ソウル系以外の評論家/ライター筋の認知度が低く、彼が手掛けたロッキー・ロビンスCD化の際にもほとんど無視されていた。けれど本作だけでも、無名のリンダ・ウィリアムスやケニー・マンを呼んでアルバムを制作しているのだから、その審美眼は超一流と言える。リピューマが自分のレーベルを立ち上げた時にエヴァンスに声を掛けたのも、その辺りを高く評価してのコトだったに違いない。

このアルバムは、タワー・レコード限定で06年にCD済みなので、右上バナーから検索を。あるうちに買うとき!の1枚です。

Rest In Peace…