tim hauser
お待たせ致しました。3週間振りのブログ再開です… その間、特に大きかったのが2人の大物、マンハッタン・トランスファーのティム・ハウザー、そしてクリームのベース/ヴォーカルで名を馳せたジャック・ブルース逝去のニュースでした。いろいろとお知らせ関係、ご紹介したいネタはありますが、まずはこの2人への想いを綴ったあと…、にしたいと思います。今日は、先月16日に72歳で死去したティム・ハウザーから。


ティムの体調が思わしくないコトを知ったのは、平成24年9月に開催された第12回の東京ジャズ。彼はその3ヶ月前に頸椎の手術を受けたため来日できず、マンハッタン・トランスファーは急遽M-Pactのトリスト・カーレスを代役に立てて公演を務めた。グループの本格スタートから40年、メンバー・チェンジはたった1回。相当な数のライヴ・ツアーをこなしながらも、彼らが鉄壁のハーモニー・ワークと弛まぬ音楽的進化を遂げて来たのは、偏にリーダーであるティム・ハウザーの手綱さばきが巧かったからである。

とりわけ、オリジナル第4作『EXTENSIONS』(79年)に於けるメンバー交替に乗じてのイメージ・チェンジは、グループに新たな息吹きを持ち込み、彼らをモダンなコンテンポラリー・ジャズ・ポップのヴォーカル・チームへと変身させた。その立役者は、ティムとプロデュースを手掛けたジェイ・グレイドン。マン・トラのバックを勤めるサックス奏者ドン・ロバーツの仲介で出会った2人は、早速ティムのアパートでミーティングを持った。

「ティムはドゥワップのような古い曲をたくさん聴かせてくれた。我々はその中から、最初に<トリックル・トリックル>を選んだ。僕がチャーリー・パーカーの<コンファーメーション>をノートに書き留めたのも、この時だったよ(次作『MECCA FOR MODERNS』収録)」(ジェイ・グレイドン/紙ジャケ盤解説用インタビューより)

極めてコンテンポラリーな作風を提示した『EXTENSIONS』ながら、収録曲のチョイスはそれに逆行。以前のマン・トラに比べても、ジャズ指向が強いセレクトになっているのが特徴だ。その結果、この年のグラミーでは、女性メンバーのジャニス・シーゲルがアレンジしたウェザー・リポートのカヴァー<Birdland>と、もうひとりの男性メンバー:アラン・ポールとジェイがアレンジした<Twilight Zone>が揃ってベスト・アレンジ部門にノミネートされ、受賞を競う形になった。結果はジャニスの勝利。でも一番重要なのは、『EXTENSIONS』がそれほどエポック・メイキングなアルバムだった、ということだろう。それを機にマン・トラもグラミー常連となり、グループとして8つの賞を獲得。ティムはドゥワップに対する深い造詣を活かし、ラジオ番組を持ったり、編集盤の選曲を任されたりしている。

最近 ほぼ毎年のようにジャパン・ツアーを行なっているマン・トラ。今年も11月に来日を控えており、当初はティムが来日メンバーに名を連ねていた。なので「元気になったのか!?」と思っていたところに、今回の訃報。取り敢えず残ったメンバー3人は、2年前の東京ジャズと同様、トリスト・カーレスを迎えてツアーを乗り切るそうで、日本公演もそのまま行なわれる。おそらく今後のマン・トラはジャニス中心に活動を続けると思うが、正式な後任となると、なかなか適当な人材がないのかも知れない。

現時点では、ティムの詳しい死因は発表されず。一時はグループに復帰していたらしいから、2年前の手術とは直接の因果関係はないのかも知れない。いずれせよ、ご苦労様でした。

Rest in Peace…