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年末から出ていた風邪の症状が、咳から発熱へと本格化。少しボ〜ッとした状態でPCに向かい、原稿書いている。取り敢えず5日の仕事始めまでにライナー5枚。その後9日までに和モノで3枚。喪中とは言え、元旦は墓参りだの弟一家が来るだのと例年通りバタバタしたが、今日から仕事全開と思っていた途端に出鼻をくじかれた。

2015年最初の書きモノは、アヴェレイジ・ホワイト・バンドのオリジナル・リイシュー。82年に一旦解散するまでの10作を、1月末/4月頭の2回に分けて販売する(タワーレコード限定特価)。英Edselでは3in2や17作品19枚組の紙ジャケ・ボックスなどが出ているが、言わばそれの日本向け仕様である。1st『SHOW YOUR HAND』の1曲差換え米盤『PUT IT WHERE YOU WANT IT』、『SHINE』直後のセミ・ベスト『VOLUME VIII』は、それぞれの元アルバムにボーナス対応。問題は編集盤『ALL THE PIECES - Alternate Versions, Rariteis & Mixes』と、この『HOW SWEET CAN YOU GET?』をどうするか。現在は担当A&R氏がいろいろヴァージョン違いを捜索していて、その辺りが出揃ったところで判断することになるだろう。

さてこの『HOW SWEET CAN YOU GET?』は、いわゆる幻の “クローヴァー・セッションズ” である。そう書くとピ〜ンと来る方もいるだろう、彼らがデビューしたMCAから早々にアトランティックへ移籍するキッカケになった音源で、人気曲<Pick Up The Pieces>やアイズレー・ブラザーズのカヴァー<Work To Do>を収めた出世作『THE AVEREGE WHITE BAND(通称ホワイト・アルバム)』(74年)の母体となったモノだ。

つまりMCAは、1stが英でコケたことから、2nd制作のバックアップには消極的だった。そこでバンドは自分たちでL.A.のスタジオを手配。MCAのL.A.ブランチにいる女性スタッフを味方につけ、彼女の家に寝泊まりしながら10曲を録音した。ところがそのテープはMCA幹部に発売を拒否され…。当方に暮れていたところに、このテープを耳にしたジェリー・ウェクスラーが契約を申し出、アトランティックへの移籍が決まったのである。音源を聴いたウェクスラーは、すぐさま25,000ドルを用意。これでOKしなかったら、“MCAエグゼクティヴのオフィスに乗り込んで、灰皿を窓に投げつけるぞ”と息巻いたそうだから、凄い勢いだ。

結局このクローヴァー・セッション10曲のうち8曲は、名匠アリフ・マーディンの手によってニューヨークで録音し直され、ホワイト・アルバムになった。それを聴くと、細かい部分にはいろいろ手が入っているが、全体的な印象は変わっていない。それなのに、どうしてMCAはそのポテンシャルを見抜けなかったか。要因は色々考えられるが、まずはご自身の耳で確認してみるのが寛容だろう。

『HOW SWEET CAN YOU GET?』として出しているのは現行の英Edsel/Demon盤で、03年の初出時は英Sonyの契約下、ホワイト・アルバムのスペシャル2枚組エディションとして発売されていた。まさに『SHOW YOUR HANDS』とホワイト・アルバムの間に眠るミッシング・リンク。ちなみにAWBのメンバーがデヴィッド・フォスターと出会ったのは、この“クローヴァー・セッションズ”録音中のことだそうである。

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