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ここ2〜3日、ワケあってマラコ・レーベルの作品群にどっぷり浸かっている。基本的にサザン・ソウルは不得手であるが、同じ南部産でもサザン・ロックは好きだし、マッスル・ショールズの音も好み。なのにどうしてサザン・ソウルが苦手かというと、どうもヴォーカルの濃さが自分には無駄に熱く感じられてしまうようで…。

でもハイやスタックスとは違い、少し時代が下がったところで全盛期を迎えているから、音が多少新しく自分にも取っ付きやすい。潰れてしまったT.K.の後継となったような側面もある。そりゃあヴォーカルは濃ゆい人が多いけど、シャーリー・ブラウン『FIRE & ICE』のように以前から割と好きだった作品も。今のところソリッドでのリイシューからは洩れているようだが、<How 'Bout Us>で有名なシャンペーンも籍を置いたし、傍系Malaco Jazzにはトム・ブラウン(tr)やボビー・ハンフリー(flute)がいた。

更に美味しいのは、リック・ホールと袂を分かったマッスル・ショールズ・リズム・セクションの面々が立ち上げたスタジオや音楽出版社を買収したこと。その時、同時に買い上げたのが、マッスル・ショールズ・サウンドというレーベルで、ここからはレニー・ルブラン(<Fallin'>で知られるルブラン&カーの片割れ)やデルバート・マクリントンらがアルバムを出している。もっともこの買収劇で軌道修正したか、モズレー&ジョンソンやローズ・ブラザーズなど、柔軟性の高い黒人グループを擁するようになったが…。

このモズレー&ジョンソンは、リトル・ミルトンやボビー・ブランド、デニス・ラサール、ジョニー・テイラーといった在マラコのベテラン勢に楽曲提供していた優秀なソングライター・チーム。幼少の頃からコンビを組み、70年代初頭からローカル・レーベルでレコード・リリース。87年の『MOSLEY & JOHNSON』により、マッスル・ショールズ・サウンド経由でマラコ・デビューした。メロウなオケに濃い口のバリトン・ヴォイスの組み合わせがユニークで、ウルサ型のソウル・ファンを唸らせたのである。

このアルバムでいえば、アーバン・ミディアムの<You Used to Be Mine>、何処となくボズ・スキャッグスを思わせる<Classy Blue>を筆頭に、甘茶系の<The Cry For Freedom>や<Let's Fall In Love>、フィリー風味のバラード<Just Because You're Mine>など、聴き処は盛り沢山。リズム隊にはお馴染みデヴィッド・フッド&ロジャー・ホーキンスの名コンビ、鍵盤にはAOR作品にも登場するクレイトン・アイヴィ、ホーンにはベテラン:ジム・ホーンらが参加している。そういやこのアルバム、昨年7月に初めて訪れたニューオーリンズのレコード屋で、日本では考えられない価格でゲットしたが、一度サクッと聴いただけでアッサリ初CD化されてしまったなぁ…。

サザン・ソウルの救世主とされ、“最後のソウル・カンパニー”とも謳われるマラコだけれど、それも上手く時代を乗り切る術を身につけていたからこそ。コアな部分はシッカリ押さえつつ、従来とは違う角度から目を向けることも、時には面白そうだ。