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ジャクソン・ブラウン@渋谷オーチャード・ホールに足を運んだ。7年ぶりの日本公演、東京3daysの中日。さっそく初日の名古屋公演終了後からSNSやアチコチのブログでレポートが上がり始め、今ツアーの期待値の高さが伝わってくる。東京初日は3/11ということで、別の意味での期待も重なった。

かくいう自分は、実のところ、ちょっとクールな立ち位置で。初めてジャクソンを聴いたのが『PRETENDER』。そして『孤独なランナー』以降のすべてのオリジナル作は、リアルタイムで接してきた。とりわけ『HOLD OUT』や『LAWYERS IN LOVE』の頃は結構聴き込んだが、実はライヴは今回が初体験。だいぶ前から “今度来たら…” と思っていたが、前回は弾き語りツアーだったので、バンド好きであるカナザワはあっさりスルーしちゃったのである。

今回の来日メンバーは、グレッグ・リース(pedal-steel,g)、ヴァル・マッカラム(g)、ボブ・グラウブ(b)、モウリシオ・ルウォック(ds)、ジェフリー・ヤング(kyd)に女性コーラス2人というラインナップ。一番名が通っているのは、古参メンバーでセッション歴も豊富なボブ・グラウブだ。でも一番の聴きモノはグレッグ・リースとヴァル・マッカラムのギター陣で、特に元ファンキー・キングスというオヨヨな経歴のグレッグ・リースが大活躍。ファンもそれをよく理解しており、彼のソロにはひと際大きな拍手が起きた。ジャクソン自身が “歴代サイコー” と言うだけあり、ツボをシッカリ押さえた、それでいてイクべきところでは見事にカッ飛んでくれるメンバーたちであった。

リクエストを交えつつの日替わりセットリストは、以下の通り。

1. The Barricades of Heaven   from『LOOKING EAST』
2. Something Fine  from『JACKSON BROWNE』
3. The Long Way Around
4. Leaving Winslow
5. The Late Show  from『LATE FOR THE SKY』
6. Shaky Town  from『RUNNING ON EMPTY』
7. I’m Alive   from『I'M ALIVE』
8. You Know The Night
9. For A Dancer  from『LATE FOR THE SKY』
10. Fountain Of Sorrow  from『LATE FOR THE SKY』

-- intermisson --

11. Your Bright Baby Blues  from『PRETENDER』
12. Rock Me on the Water  from『JACKSON BROWNE』
13. Call It A Loan  from『HOLD OUT』
14. If I Could Be Anywhere
15. Which Side?
16. Standing In the Breach
17. Looking East   from『LOOKING EAST』
18. The Birds of St. Marks
19. In The Shape Of A Heart    from『LIVES IN BALANCE』
20. Doctor My Eyes   from『JACKSON BROWNE』
21. Running on Empty  from『RUNNING ON EMPTY』

-- Encore--
22. Take It Easy  from『FOR EVERYMAN』
23. Our Lady of the Well  from『FOR EVERYMAN』
-- Double Encore--
24. For A Rocker   from『LAWYERS IN LOVE』
25. Before The Deluge   from『LATE FOR THE SKY』
  ※アルバム名のない曲は新作『STANDING IN THE BREACH』より

充実のライヴ・レポートは、いまジャクソンが籍を置くソニーのA&R氏のブログHIGH-HOPES管理人のひとりごとをご覧戴くとして(名古屋公演からしばらく追っ掛け状態!)、ココではライヴの中身とは別に、カナザワがちょっと思ったことを。

ファンならご存知のように、ジャクソンのライヴではファンがリクエストを出し、ジャクソンがそれに応えるのが慣例になっている。今回も多くのリクエスト曲が口々に叫ばれ、ステージ上のジャクソンがそれに反応する場面が見られた。でも既にSNSなどでは、この掛け声を「うるさい!」と非難する書き込みも。こうしたマナーの悪さを指摘する声は来日の度に上がるらしく、ライブ未体験の自分は「何だかなぁ〜」と思っていた。

でも実際に接してみると、確かに耳障りだ。ジャクソンのライヴともなれば、年季の入ったファンが多いのだから、リクエストを募るタイミングなど分かりそうなモノ。だが現場では、やたらと曲間ごとに大声を張り上げるが輩がいるようで…。もちろん度を超えて騒いだり執拗なリクエストは言語道断だが、それをやり込めようという人も、生ジャクソンの歌に集中して自分の世界を拡げたいのに、それを妨げられたから怒っているに過ぎないのではないか。だとしたら、ベクトルは正反対でも、どちらも結局ファンのエゴなのだと思う。日本では大人しく聴き入るのがマナーだけれど、米国ファンはもっと身勝手で気ままに騒ぐはず。ジャクソンがリクエストに応えるようになったのも、より多くのファンに楽しんでもらおうと生まれたスタイルではないのか。寡黙で内省的なファンばかりを相手にしているワケではないのだ。

名古屋で<Before The Deluge>を歌わなかったのを、リクエストに応えたから、とする声も耳にした。でも東京初日では、きっちりセットリストを守って、ラストに<Before The Deluge>を歌っている。ということは、ジャクソン自身、名古屋では “<Before The Deluge>を歌う” という強い意志を持っていなかったことになる。プライオリティはリクエスト曲にあったのだ。実は東京2日目の今日も、最後の最後、ステージ袖のスタッフに何事か確認した後で歌い始めた。おそらくは「やっても大丈夫?」という問いだった可能性が高く、終演は22時を大きく廻っていた。

つまりは、日本の古いファンたちは、ジャクソンに個々の思い入れを過剰に課してしまっている、ということ。時に強い社会的メッセージを投げ掛けながらも、彼自身は決して頭デッカチにならない。今までのベスト・パフォーマンス!、そんな声さえ耳にした充実のジャパン・ツアーなのに、ファンの一部は 熱さ余って何とやら… 。ちょっと考えさせられた公演だった。