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行ってきました。観てきました。ブルース・ガイチ&ジェイニー・クルーワー presents AOR トーキョー・セッション Vol.3 feat. トミー・ファンダーバーク@丸の内Cotton Clubの初日公演。Facebookに上げられた “御一行無事到着” のピンナップを観て、トミーのオジサン化にちょっと…、イヤかなりおののいてしまったが(自分はさておき)、ライヴはまったくノー・プロブレム。というか、マーク・ジョーダンを迎えたVol.1、ランディ・グッドラムを連れて来たVo.2よりも、ずっと充実したライヴ・パフォーマンスだった。トミーの歌声を好きなヒトは、このチャンスを逃したら後悔するよ! お世辞じゃなく、本当にレヴェルの高いステージだったと思っている。(以下ネタバレあり)
客電が落ちると、メンバーがステージへ。まずは短めのスカートで若々しくまとめたジェイニーが中央に立ち、最新盤(新曲入りベスト)である『LOVE』から <Falling In Love>と<Call Me Romantic>を矢継ぎ早に。麗しきルックスも然ることながら、歌声の魅力は全然落ちていない。更に彼女のお気に入りらしいアルバム『PERFUME』(04年)からジャジーなタイトル曲を歌うと、MCでエリック・カルメンの話を始めた。そして最後に「でも今夜はエリックはココにはいない。けれど今夜は彼が代わりに私と歌ってくれるわ」
ゆっくり登場したのは、お待ちかねのトミー・ファンダーバークだ。

見た目はやはり、心配していた通り。髪は短く、後ろを向くと少々ヤバイことになっている。お腹はすっかりポンポコリン。オマケにノー・タイでタキシードだから、上着のボタンを外すと太鼓腹が目立ってしまう。あちゃぁ〜、写真の通りぢゃん… 

でもでも、歌は抜群だった。マジで良かった。最初のデュエット<Only Time Will Tell>こそ慣らし運転っぽかったけれど、ジェイニーがキーボードに下がって披露されたキング・オブ・ハーツの爽快な名曲<Land Of Dreams>を聴いていて、ジワジワッと感動が押し寄せてきたもの…

そりゃーあれから20年。エアプレイからだと35年が過ぎている。その頃に比べたら声のハリはなくなっていて当たり前だし、トップだって落ちているだろう。それでも歌声そのものは健在で、ハイトーンも充分出ている。見た目のギャップを考えたら、これはもう “ほとんど変わってない” と言うレヴェル。目を閉じて聴いていたら、ホント、当時のままだ。今日は通しで観たが、2nd Setではココで「気分が乗ってきた。もっとロックしようゼ」的なノリをカマし、<Remember When>になだれ込んでいった。この曲はトミーの唯一のソロ・アルバム『ANYTHING FOR YOU』(05年)では、<Remember Our Love>のタイトルで再演されている。

バックの顔ぶれは、デヴィッド・フォスターと演っているというScott Sheriff (key,vo)、ブルースと一緒にピーター・セテラをサポートしているChris Rodriguez (g,vo)、最近はマイケル・マクドナルドをサポートしているらしいDan Needham (ds) に、Tim Denbo (b) という面々。中でもクリスのギターが美味しくて、バイ・プレイヤーのブルースを凌駕するほど華麗なソロを披露した。実はこの人、CCM系のソロ・アルバムを出しているんだけどね。そんなバンド・アンサンブルの妙は、ドラマチックな<The Night The Angels Cried>で。そしてジェイニーがステージ中央へ戻ると、ビル・チャンプリンとのデュエットしていた<Forever Valentine>をトミーとシットリ聴かせてくれた。

ここでトミーは一旦ステージから引き、ジェイニーの<He's The Moon Is Spain>と『PERFUME』からの< I Have A Thing For Sting>でホンノリ色彩感を豊かに。再びトミーが戻って、ブルースがアコギで弾き始めたのは、あの名カヴァー<After The Love Is Gone>だ。キング・オブ・ハーツ時代はCDシングルのみのリリースだったが、もちろん上掲の編集盤には収録。そのヴァージョン通りのオーガニックなテイストで始まり、中盤からリズム隊の入った新アレンジになる。この名曲をトミーの生のヴォーカルで聴くのは、96年のジェイ・グレイドン・バンド以来だから、感激もひとしおだ。

そしてココからラストへ向けて加速し、キング・オブ・ハーツの1stから<Lovin' Arms>と<Working Man>を連発。アンコールは、ブルース&ジェイニー夫妻がマイケル・センベロと組んでいたボサノヴァ・ホテルのアルバムから、陽気なラテン・カヴァー< A Day In The Life Of A Fool>で締め括った。最後は席を立ってリズムを取るオーディエンスも多く、なかなかの盛り上がりで

今だから言えることだが、Vol.3の企画が出てきた時、実は他にもゲスト候補がいた。だがブルースが現実的なセンで挙げてきた中に、トミーの名があった。彼は既に前回も名が出ていたが、その時はブルースの判断で見送られた経緯がある。なので “今度こそ” という想いを込め、トミーをリクエスト。それがこうして形になって、ホッとした気持ちも大きい。

2nd終演後、ブルースと少し話をした。
「今回のバンドは今までで一番良いね。いっぱいリハーサルしたの?」
すると彼は一瞬考えて、
「ウム、確かにベストだな。でもトミーが入ってからは2日しかリハしてないんだけどね」
するとジェイニーが口を挟み
「トミーは家で喉を慣らしてから合流したのよ。ホントに素晴らしい声だわ」

そのトミー、現在は音楽活動から少し距離を置いている、とのこと。
「じゃあ、あの素晴らしいハイトーン・ヴォイスはどうやって維持してるの?」
「クリーン・ライフだよ」
彼はゴスペル出身なので、
「教会では歌ってないの?」
「いや時々歌っているよ」
そりゃそうだろう。そうじゃなきゃ、おそらくあの歌声はキープできない。

AORフリークなら、そんな貴重な歌声をオメオメと聴き逃すワケにはいかないはず。…とはいえ、今回はウィークデーの公演しかなく、しかも年度初めにお花見など、何かと慌ただしい時期。今日・明日のショウにはまだ席の余裕があるそうので、是非時間を作って足を運ばれたい。

  《Set List on 1st / 2nd Show》
1. Falling In Love
2. Call Me Romantic
3. Perfume
4. Only Time Will Tell
5. Land Of Dreams
6. Remember When
7. The Night The Angels Cried
8. Forever Valentine
9. He's The Moon Is Spain
10. I Have A Thing For Sting
11. After The Love Is Gone
12. Lovin' Arms
13. Working Man
-- Encour --
14. A Day In The Life Of A Fool