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レイ・チャールズへのオマージュとして作ったオールド・スクールなソウル・ジャズ作『ONLY EVERYTHING』から、早5年。途中でボブ・ジェームスとの共演作『QUARTETTE HUMAINE』(13年)や、ヴァイブ奏者ボビー・ハッチャーソンの『ENJOY THE VIEW』(14年)に参加したが、サンボーンのリーダー作の間隔がこれほど空くのは初めてのことじゃないか。案の定、届けられた新作は、ちょっとした変化と共に、“サンボーン健在” を示す内容となっていた。

音を聴いてすぐに感じたのは、アルトが粗く生々しいトーンになったこと。もしかしたら前作にもそんな傾向があったかも知れないけれど、アルバム全体のトーンが内省的なので、それが際立つ。しかもそのブロウがかなり熱く、聴き手をジワジワと引き込んでいくような磁場を放っている。そこがイイ。

参加ミュージシャンは、いつになく若手が多数。kydのロイ・アサフやギターのヨータム・シルヴァースタインらは、共にニューヨークで活動するイスラエル人ミュージシャンだそうだ。加えて、ボブ・ジェームスとの共演作でも取り上げたフランス人ソングライター:アリス・ソイヤーの提供が2曲。ミッシェル・ルグランやエルメート・パスコアール作品のカヴァーを演っていたり(後者は日本盤ボーナス曲)もする。

それをプロデューサーとして仕切っているのが、『INSIDE』以来15年ぶりの本格的コラボとなるマーカス・ミラーだ。最新作『AFRODEEZIA』でも分かるように、マーカスはいまアフリカに気触れている。なるほど、今回のサンボーンが如何にもアメリカンなコンテンポラリー・ジャズ作品になっていないのは、そういうワケか。

他にもイエロージャケッツのドラマー:マーカス・ベイラー、お馴染みのリッキー・ピーターソン(kyd)などの名も。テンプテーションズのR&Bナンバー1ヒット<Can't Get Next You>では元タワー・オブ・パワーのラリー・ブラッグス、ルグランの<Windmills Of Your Mind>ではランディ・クロフォードがリード・ヴォーカルを取る。

ジャケにあしらわれた「川」の字は、もちろん『TIME AND THE RIVER』というタイトルから来ているが、同時に “3本(サンボン)の線” を意味するモノでも。ライナーに拠れば、彼は最近、ハドソン川添いの和風邸宅へ転居したそうだ。