james brown
全音楽ファン必見という話題の映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男(原題GET ON UP)』を観て来た。公開初日の上映1回目を観る、なんていうのは、我が人生で初めての出来事だけれど、都内ではなく地元のシネマを選んだので余裕綽々。ゆったりした気分で、ちょっと破天荒なレジェンドの物語を堪能した。実際は、週末に相方と一緒に観るなら、ココしかなさそう…、という状況なのだが…

始まったばかりゆえ詳しいストーリーには触れないけれど、主演チャドウィック・ボーズマンのJ.B.成り切りぶりがとにかく凄まじい。それこそ、映画『レイ』でジェイミー・フォックスがレイ・チャールズの生き写しのような演技を見せたのに匹敵するくらい。決して熱心なJ.B.フリークではない自分がそう感じるのだから、J.B.を愛でていれば愛でているほど、もっと多くの発見があるはずだ。

幼少時代の苦難の描写に対して、教会でゴスペルに出逢い、ボビー・バード率いるフェイマス・フレイムスに加入、やがてソロ・シンガーと成長していくあたりは、かなりスピーディな展開。これはJ.B.のシンガーとしての天賦の才を強調しているのだろう。そしてレコード・デビュー後はビジネス面でも頭角を現し、やがてはシンガーの枠を飛び越えて黒人解放運動のシンボルへと祭り上げられていく。そこでポイントになるのは、公私に渡って献身的にJ..B.をサポートし続けた旧友ボビー・バードと、ビジネス面で良き理解者となった白人マネージャー:ベン・バート(ダン・エイクロイド)の存在だ。そして彼らが順にJ.B.の元から去って行くに従い、彼はだんだん壊れていく。

もうひとつの見所は、幼いJ.B.を捨てた母親との再会、ボビー・バードとの友情を描いた人間ドラマとしての側面である。エキセントリックでトラブル・メイカーのイメージがつきまとった80年代以降のJ.B.だが、そこにはスーパースターならではの悲哀があった。この映画に重厚感が出たのは、そうした裏の顔にもチャンと光を当てたところだろう。

“ファンクの帝王” と謳われた天才の天才たる所以をアピールしつつ、天才だってひとりの人間だという事実に気づかされるジェームス・ブラウンの生き様。音楽好きならば、是非とも知っておくべきなのは間違いない。

そうそう、J.B.の2番目の奥様ディディ役でジル・スコットが出演しているのも、ソウル好きには見逃せないポイント。プロデューサーのミック・ジャガー、ストーンズの外でもイイ仕事してます。