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アナログ盤がチープなのに、CDは激レアでオークションなら万単位。そういう法外なアルバム2作が、念願かなってようやく【Light Mellow's Picks】でリイシューされる。ジャズ・‥シンガー:中本マリが81〜82年にリリースした、『LADY IN LOVE』と『MOOD FOR A LADY』の2作だ。当時は阿川泰子が “ネクタイ族のアイドル” として大ヒットしていた頃で、それを追う実力派が笠井紀美子とこの中本マリ。もうちょっと若いところでマリーンや秋本奈緒美がデビューし、ちょっとした女性ジャズ・シンガー・ブームが起きていた。



元々、オーセンティックなジャズ・スタンダードをハスキー・ヴォイスで歌い高評価を受けていたマリだが、阿川がボサノヴァやソフト・ポップ路線を取り入れて成功したのに対抗してか、彼女はコンテンポラリー・ヴォーカル路線に舵を切った。狙うはズバリ、ロバータ・フラック。この2作でサウンドメイクを仕切ったキーボード奏者バリー・マイルスは、まさにロバートのツアー・バンドで音楽監督を務めていた人である。

『LADY IN LOVE』では、同時期に同じJVCに籍を置いていたドン・グルーシンが協力。その流れで、リー・リトナーやエイブ・ラボリエル、アレックス・アクーニャ、スティーヴ・フォアマンなど、ジェントル・ソウツ〜フレンドシップ周辺メンバーが参加した。マイケル・センベロも、セルジオ・メンデス人脈に通じていたドンらしい人選。ホーン・セクションは、実質的にジェリー・ヘイ抜きのシーウインド・ホーンズだ。

実を言うと、最初はエリック・タッグが楽曲提供するはずだったとか。ところが彼が送って来た曲は、好曲が多いながらもマリに合わず、すべてボツになったという。何とももったいない話だが、このアルバムを聞くと、素直に「それで正解!」と頷ける。さすがに歌声の透明感ではロバータに敵わないが、アルバムの内容はロバータの名作群にも決してヒケを取らない。それぐらい完成度の高い、素晴らしいコンテンポラリー・ヴォーカル・アルバムである。

続く『MOOD FOR A LADY』は、前作の好評ぶりを受けたバリー・マイルスが、完全に作編曲を任された作品だ。ラボリエルやスティーヴ・フォアマンが連続参加し、リトナーとセンベロの後任ギターはロベン・フォードが弾いている。またスタジオ・セッションに身を投じて間もないヴィニー・カリウタ、名手アーニー・ワッツが新たに参加。全般的にリズミカルな楽曲が増え、ウェットなイメージの『LADY IN LOVE』よりも明るく華やいだ雰囲気になった。

今も現役で歌っているマリだが、彼女の代表作と言えば、まずこの2作。ジャズ・ヴォーカル云々ではなく、AOR的感覚で楽しんで欲しい。もちろん買い逃しは厳禁ヨ。

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