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新聞などでも既報の通り、イエスの中心メンバー:クリス・スクワイアーが急逝骨髄生白血病のため、27日、米アリゾナ州フェニックスの病院で亡くなった。享年67歳。自分でもすぐにFacebookに速報をアップしたけれど、プログレ界を代表する大物バンドの中核だけに音楽ファンのショックは大きく、その記事がネットを賑わせている。

イエスの代表作と言えば、『こわれもの』(71年)か『危機』(72年)が当たり前。結成メンバーであるジョン・アンダーソン(vo)とクリス、ビル・ブルフォード(ds)、そしてそこにスティーヴ・ハウ(g)、リック・ウェイクマン(kyd)という才能が順次加入し、黄金時代を築いていった。だがクリスを軸にイエスの歴史を紐解くと、少し様相が変わって見える。

『こわれもの』『危機』や『海洋地形学の物語』、『リレイヤー』といった作品群を主導したのは、あくまでジョンとスティーヴ。クリスは『海洋地形学の物語』で一部フィーチャーされたものの、やはりポジション的には3番目という立ち位置だった。しかし『リレイヤー』のツアー後に持たれたメンバー各々のソロ・プロジェクトで、何かが変わった。他のメンバーが趣味的なアルバムを作ってグループ活動のストレスを発散させているのに、クリスだけは、イエスを意識した極めてポジティヴな作品を作り上げた。タイトルも『FISH OUT OF WATER』。これがクリスの唯一のソロ・アルバム(他にクリスマス企画や共演作あり)というのも、ココで彼が自分のイエスに於けるスタンスをシッカリ確認したからに違いない。

そしてバラバラに動いていたメンバーが再び集結して生まれたのが、この『究極(GOING FOR THE ONE)』(77年)だ。ソロ作を機にパトリック・モラーツ(kyd)がバンドを離れ、リック・ウェイクマンが復帰。それが本作のトピックだが、その裏でメンバーの力関係に微妙な変化が生じていたのが分かる。音を聴けば、明らかにリズム隊、特にクリスの発言力が増しているが伝わるのだ。もちろんその背景には、パンクの台頭により、どんなバンドもパワフルなビートを前面に出す傾向が強くなったことがあるし、ジョンがヴァンゲリスとの活動に傾倒したことも見逃せない。かくして次作『TOMARTO』では、グループとしての一体感が弱まり、ジョンとリックの脱退へ発展。段々にクリスがグループのイニシアチヴを掌握していくことになる。そうした変化の兆しが、それまでのロジャー・ディーンの幻想的なイラストではなく、モダンなヒプノシスを起用したアートワークに表れていた。

硬質な音が特徴のリッケンバッカー・ベースをピック弾きでビンビン鳴らすという、かなり個性的なスタイルを持っていたクリス。それでも『リレイヤー』までは、緻密なアンサンブルの中でボトムを固めることに重点が置かれていたと思う。しかし『究極』以降は、サウンドがシンプルになった分、クリスのベースがアンサンブルをリードしていく形に。『90125』と<ロンリー・ハート>の予期せぬ大ヒットを挟んで分裂したイエスが再び集結し、『結晶(UNION)』を作ることができたのも、クリスが橋渡し役を果たしたからだった。

結成から約47年、常にイエスを支え続けた唯一のオリジナル・メンバー、クリス・スクワイア。この夏のTOTOとのダブル・ビル・ツアーは、一時メンバーだったビリー・シャーウッドをトラに立てて予定通り行なわれるようだし、早くも来年のツアー・スケジュールも発表されている。しかしイエスの歴史を背負ったクリスの急逝で、バンドとしての存在価値が大きく損なわれた感は否めない。何処かのタイミングで歴代メンバーが集結した追悼イベントが組まれそうだが、果たして残されたメンバーたちは何処へ向かうだろうか…。

かく言う自分は、在りし日のクリスを忍びながら、結局買ってしまった14枚組ボックス『PROGENY』を聴き進めていくことにしよう。Rest in Peace…