venice
関東甲信越地方、梅雨明けッ! なので今日はそれに相応しいサマー・アイテムを紹介しよう。メジャー・デビューから既に25年。知ってる人はメチャクチャ愛聴している、オランダを中心にヨーロッパではかなりのビッグネーム、なのに日本では全然知名度が上がらないウエストコーストの名バンド、ヴェニスがそれだ。先頃来日して大評判となったジャクソン・ブラウンのトリビュート・アルバム『LOOKING INTO YOU』(2013年/本邦未発)では、ブルース・スプリングスティーンやドン・ヘンリー、ボニー・レイット、J.D.サウザー、カーラ・ボノフ…といった大物たちが居並ぶ中、フレッシュなハーモニーで<For A Dancer>を歌っていた。その時、“これ誰?” と思った方は少なくなかったと思う。そもそも『WHAT SUMMER BRINGS 』〜夏が運んでくるモノ〜という思わせなタイトルが、とてもステキじゃありませんか

バンド名のヴェニスとは、イタリア北東部の旧都市(今ではヴェネチアと呼ぶのが一般的)ではなく、彼らの出身地であるカリフォルニアはL.A.の西地区、サンタモニカのすぐ南に広がる海辺の街のこと。砂浜沿いにショッピング・モールが連なり、地元の人や観光客が思い思いに時を過ごすカリフォルニアらしい場所だ。昨年たまたま彼の地を訪れ、海風に当たりながらオーガニック・ブレックファーストを食す機会があったが、それはなかなかにアメリカンな気分だった。上掲のジャケットは、そのヴェニス・ビーチへの入り口である。

このヴェニスは、50〜60年代に大活躍した4人姉妹のコーラス・グループ:レノン・シスターズの息子たちが組んだファミリー・グループ。つまり従兄弟同志に当たる2組の兄弟からなり、甥っ子にはジャック・ジョンソンと親しいテッド・レノンがいるというから、血は争えない。メンバーのひとりであるキップ・レノンは、80年代後半に日本で数多くのCMソングを歌い、ミニ・アルバムまで出していたが、今となっては “若気の至り”で、あまり良い想い出ではないらしい。彼はそれ以前にもクインシー・ジョーンズの元で働いたり、ヴィクター・フェルドマンのジェネレーション・バンドに客演したり、というキャリアがある。

ヴェニス自体、結成は77年と古く、ダニー・コーチマーのプロデュースでメジャー・デビューした時は、7人組で豪放な大陸的アメリカン・ロックを聴かせた。しかし紆余曲折あって血の繋がった “フォー・レノンズ” が残り、ヴォーカル・ハーモニーを活かしたアコースティック主体のサウンドにシフト。そして00年にオランダのTV番組に出演したのを機にヨーロッパで人気沸騰し、ジャクソン・ブラウンやデヴィッド・クロスビーをして “僕らのフェイヴァリット・バンド” と言わしめたのである。

日本発売は、実はこれで3回目。前回はヨーロッパでの人気ぶりを受けての国内リリース(06年)で、自分も大いに期待を寄せた。が、発売元が新しいインディー・レーベルだったためか、まったくプロモーションされず、煮え湯を飲むコトに。それ故 “いつか機会があれば…” と思っていたが、それがようやく実現した次第。でも今はその喜びよりも、大きなプレッシャーを感じている。何故ならその音は、先に名の挙がったジャクソン・ブラウン、クロスビー・スティルス&ナッシュは元より、アメリカや初期イーグルス、ビーチ・ボーイズやトム・ペティ等などを髣髴させる本格派なのだから。その筋に明るい方なら、ジェフリー・フォスケットやジェフ・ラーソンを思い出すはずで、西海岸ロック・ファンならまず外すことはない。前述通りサーフ・ロックとの共通項も少なくないが、ヴェニスはオーガニックながらもシッカリとサウンドを作り込んでいくタイプなので、ジャック・ジョンソンよりドノヴァン・フランケンレイターに近いと言える。

しかも意外なコトに、ビートルズからの影響も随所に。実はレノン家の祖先はアイルランドの出で、かのジョン・レノンと同じ血筋に当たるとか。彼らはヴェニスに移り住んでの3世代目らしい。でもそうした血筋よりも、純粋にビートルズを愛していた、ということだろう。同時にバーズやブレッド、ポコ、ロギンズ&メッシーナなど、古き佳き西海岸サウンドを今もっとも瑞々しく継承したグループといえる。だから米本国より、ヨーロッパ諸国でウケが良いのではないか。個人的に一番近しいと感じるのは、アメリカやジェフ・ラーソンあたりかな。

この『WHAT SUMMER BRINGS』は、元々2年前に2枚組としてリリースされた大作だ。でもそれを日本でそのまま紹介するのは、ちとヘヴィ。アートワークも日本のマーケット向きではない。…ということで、14曲入りのシングル・アルバムに構成し直し、アートワークも変更して《ジャパン・エディション》とした。選曲は担当A&Rと相談しながらカナザワが決めたが、それが中心メンバーであるマイケル・レノンのお墨付きを得ることができた。解説にはそのマイケル氏とのメール・インタビューを掲載している。

まずはサンプル音源を聴いていただき、お気に召したら、是非アルバムを手に取って欲しい。売れるかどうかはともかく、西海岸ロック好きは、必ずや反応してしまうはずの音だから。