debra laws
ワーナーの【80's Soul Classics Best Collection1000】シリーズ、第1弾25タイトルが発売。カナザワも3本ほどライナー執筆させて戴いている。その中で一番にプッシュしたいのが、このデブラ・ロウズの81年デビュー作。ココから立て続けにスマッシュ・ヒットを放ったのに、後続がなく、時代の徒花のようになってしまった実力派だ。

何せデブラは、ヒューバート(flute)、ロニー(sax/ex-Earth Wind & Fire)、エロイーズ(vo)などを生んだ名門ロウズ・ファミリーの末娘。ヒューバートの人気作『FAMILY』(80年)のタイトル曲で瑞々しいリード・ヴォーカルを披露し、これがR&B 74位になったことから、デビュー話に繋がったとされる。

その2人の兄たちがプロデュースを分け合い、EW&F人脈からラリー・ダン(kyd)やローランド・バウティスタ(g)らが参加。一緒に『FAMILY』に参加したボビー・ライル(kyd)やネイザン・イースト(b)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(ds)も名を連ねるこのアルバム。タイトル曲の<Very Special>は、彼女と兄ロニーとの甘いデュエットで、2枚目のシングルとしてR&Bチャート11位を記録した。他にもネイザンが提供した<Be Yourself>(同31位)、デヴィッド・ラズリー作の好曲<Meant For You>(同47位/)がスマッシュ・ヒット。2枚のアルバムを残す黒人シンガー・ソングライター・デュオ:グレイ&ハンクスの作の<How Long>は、本作以前にテルマ・ジョーンズやT.K.レーベルの女性3人組ブランディー、イヴォンヌ・エリマンらが歌っていた。

デブラのヴォーカルは、パティ・オースティンやアンジェラ・ボフィール、ランディ・クロフォードらに連なるクロスオーヴァー・スタイル。その愛くるしく伸びやかな歌声は、広く好印象を与える。ただし当時は思ったほど安定した支持を集められず、93年までは後続作もないまま。しかもその2ndは取るに足らぬ凡作で、再浮上はならなかった。確かにストリート・サウンド主流の時代、彼女には出る幕などなかったのだろうが、高評価を受けた1枚目を出したっきり…という裏には、何かプライヴェートの事情があったのかもしれない。

ところが、10年ほど前にジェニファー・ロペスがタイトル曲をサンプリングし、<All I Have>として全米No.1ヒット。それを機にレア・グルーヴ方面で再評価が進み、今ではレア・グルーヴ方面から “ポスト・パトリース・ラッシェン” などと謳われる。その持ち上げ方は、日本のフュージョン好きが “一応ロウズ家だから…”と上から目線で聴いていたデビュー時より、今の方がナチュラルに見える。純粋に楽曲や歌声に反応しているからだ。支持層も今ではグッと若返り、R&B方向へシフトしているようだ。

いずれにせよ、貴殿が80'sソウル好きならば、ここは是非アルバム丸ごと堪能して欲しい。1000円(+税)という価格設定は、そういう冒険買いが許されるレヴェルじゃないかな

ワーナーミュージックジャパン 80's Soul Classics Best Collection1000 オフィシャルサイトへ