シンリズム
新世代のポップ・マエストロ、高校生の天才的ポップ・クリエイターとして人気急上昇中のシンリズム、初のツアー『NEW RHYTHM』@渋谷クアトロ。シングル<心理の森>が全国FM曲でヘヴィ・ロテ中という事情もあってか、ホール内は立ち見まで超満員。その期待感が頂点に達した頃、フルアコのヴィンテージ・ギターを抱えたシンリズムが登場した。

オープニングのジャジーなインストに始まり、1stアルバム『NEW RHYTHM』収録曲を中心に、まだタイトルもない新曲まで。キャッチーなメロディからハイブリッドに展開して行くメロディとアレンジは、如何にも新世代らしい斬新さと妙な懐かしさが同居したそれ。自分のようなオジサン世代が聴くと、些かハミ出し気味に聴こえるかも知れない。自分はそこを新鮮と思って楽しんでいるが、今の20代はそれをもっとストレートに受け入れているんだろうな。とはいえ、一番ポップな<心理の森>しか聴かずにライヴへ来ると、アレ!? ちょっと難しい? なんて思ったかも。そのサイケなベクトルに、何処かシド・バレットの影を見た自分である。でもアルバムに耳を通していれば、シド・バレットなんか知らなくても、きっと普通に楽しめたのでは?

アコギにセミアコ、テレキャスター、そして鍵盤もと、目まぐるしく楽器を持ち替えて行く様は、まさにマルチ・クリエイター。でもアルバムをレビューした時に触れた通り、ヴォーカルは決して上手いワケじゃなく、楽器の壁に埋もれがちだったし、何曲か披露したギター・ソロもまだまだ拙い。けれど彼はまだ、夏休みを迎えたばかりの高校3年生。しかも宅録系だから、ライヴなどはあまり経験していないはずである。なのにMCの喋りは案外シッカリしているし、プロ・ミュージシャンに囲まれても物怖じせず自分をチャンと保っている。とりわけ収穫だったのがベースの腕前だ。2曲ほどプレイしたが、何でも最初に手にした楽器がベースだそうで、技術レヴェルは確実にギターより上と見た。そのノリの良さから、シッカリ天賦の才が感じ取れたほど。イヤイヤ、大した高校生だワ

ちなみに今ツアーのバック・メンバーは、高野勲(kyd)、小松シゲル (ds/NONA REEVES) 、藤井謙二(g)、酒井由里絵(b)、西岡ヒデロー (per,tr/Conguero Tres Hoofers) に、ゲストでSHISHAMOの宮崎朝子(cho)という陣容。ぶっちゃけカナザワには縁の薄い人が多いけど、前述のようなサイケな展開もアリ、を考えれば、ヒップホップやグランジを通過した上でロックやポップスを演るミュージシャンの方が相性が良いと思う。アンコールで披露されたモータウン・ビートの新曲に、この若きジニアスの行く末を垣間見た気がした。

終演後はバックステージを訪れ、一緒に観に行ったブルー・ペパーズとシンリズムの初顔合わせに立ち会い。ブルー・ペパーズは現役大学生のツーメン・ユニットで、シンリズムより もうワンランク都会的なシティ・ポップ/J-AORを聴かせる若きクリエイター・チームだ。YouTubeにリード曲がアップされた途端、インディ、メジャー相見えての争奪戦となり、ようやくこの秋、我が Light Mellow's Choice(ヴィヴィド)からのリリースが決まった。その音には、キリンジやノーナ・リーヴズ、冨田ラボ、そしてスティーリー・ダンやデヴィッド・フォスター/ジェイ・グレイドンなどの洋楽AORファンまで、ニヤリとする瞬間が鏤められている。まずはイントロダクション的にそのリード曲とミニ・アルバムのダイジェスト音源をアップしておくので是非ともチェックを。詳細は8月発表予定です。

シンリズムとブルー・ペパーズが言葉を交わす様を脇で見ていて、“この2組が日本のポップス界の明日を支えることになるかも…” なんて思ったカナザワでした…