chocolate lips
昨日のネタである滝沢洋一と同時リイユーされ、2枚合わせて解説を寄稿させてもらったのが、Chocolate Lips のワン&オンリー作(84年)。ヴォーカルの藤原美穂さんとは、実は自分が音楽ライターになる前からチョッとしたご縁があり、知らない仲ではなかったのだが、これを機にSNSなどで再接近し、先週のPennyさん(当山ひとみ)ライヴで、ようやく再会が叶った。年齢は自分と大して変わらないはずなのに、相変わらずキュートな美穂さんだったナ…

で Chocolate Lips。再発の裏事情は、昨今の80’sファンク/ブギー人気によって和モノ・フリークの間で再評価が著しく、海外からも引き合いが多数舞い込んでいたからである。何せ某オークション市場では、Chocolate Lipsのアルバムと、今回ボーナス収録されたMIHO名義のミニ・ソロ・アルバム、この2枚で軽くゲー万円越え(いわゆる片手)という、超プレミア・アイテムなのだ。

結成のキッカケは、COLD FIREのメンバーとしてCapitolからアルバムを出しているジミー・ウィーヴァー(sax)が、<ダンシング・オールナイト>で知られる もんた&ブラザーズのゲスト・プレイヤーとして来日。たまたま遊びに行った六本木のライヴ・ハウスで、友人のバンドに飛び入りして歌っていた駆け出しグラフィック・デザイナー美穂嬢にノックアウトさせられたのが始まりだ。長身のベーシスト:ジェームス・ノーウッドは、留学生として来日。ミュージシャンとして働きながら、黒人モデル、映画やTVのチョイ役などをこなしていた。スタンリー・クラークとルイス・ジョンソンを研究し、つのだひろ率いるスーパー・グループ “セッション・グランプリ” の初代ベースを務めたそうである。

そのサウンドは、時代を象徴するポップな80'sモダン・ファンク。クロスオーヴァー・スタイルのブラック・コンテンポラリーを下敷きにしながら、プリンスのようなファンク・ロック、デュラン・デュランやカジャグーグー辺りを髣髴させるニュー・ウェイヴ寄りのポップ・ファンクを取り込んでいる。今聴くと、“オォ、この時代の日本にも、こんなエッジィなコトを演っていた連中がいたんだ!” と思うことしきり。かく言う自分、Chocolate Lipsはリアルタイムで聴いてたハズだが、やはり耳が洋楽に凝り固まっていたのか、真剣に聴き込むことはなかった。美穂さん、ゴメンちゃい… もっともご当人も、“半分歌謡曲のつもりで歌ってた” というから、やはり時代が早過ぎたのかも。

その後セッション・シンガーの道へ進んだ彼女は、PAZZやOG’S、パ・ディ・シャといったユニットでシンガーを務めながら、平井堅や今井美樹、鈴木雅之、MISIAといった著名どころのスタジオ・ワークやライヴをサポート。11年に初めて “藤原美穂” 名義でのミニ・アルバム『MISTRESS』を作った。

それにしても、“レインボー・ヴォイス”と謳われる彼女の歌声の表情の豊かさったら サウンドの面白さはもちろんだが、こんな影の実力派がJ-POP界を支えていることにも思いを馳せて。これを和モノDJたちのネタだけに止めておくのは、少々もったいないよ。

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