kazemachi2015


松本隆 作詞活動45周年記念ライヴ『風街レジェンド2015』2days、その初日@東京国際フォーラム ホールAを観た。とにかく発表直後から、出演者の錚々たる顔ぶれに驚かされ、それを目の当たりにして尚更…、という、ほとんど夢の中へ連れて行かれたような宵だった。

オープニングは、はっぴいえんど<夏なんです>で地味〜にスタート。続いては<花いちもんめ>でチョッと華やいだ雰囲気になり、細野が短いMCを入れて、「仲間を1人失ってしまいました」と亡くなった大滝さんに言及。その代わりに佐野元春を呼び込み、ノリの良い <はいからはくち>を披露する。40年ぶりに本気でドラムを叩いたと言う松本だが、そのグルーヴ感は健在だ。

ここでセットが入れ替わり、“風街ばんど” と名付けられたサポート陣が所定の位置に。ザッと書いておくと、音楽監督を務める井上鑑(kyd)以下、松原正樹/今 剛(g)、吉川忠英(ac-g)、高水健司(b)、林立夫/山木秀夫(ds)、三沢またろう(perc)、比山貴咏史/藤田真由美(cho)、佐々木久美(cho,organ)、山本拓夫(sax)、金原千恵子/笠原あやの(strings)という豪華布陣。井山大今+パラシュート系が中核に座るあたりは、如何にも井上鑑らしい。

そしてココからは、松本が作詞を手掛けた名曲・ヒット曲のオン・パレード。しかも進行役はホリゾント及びステージ両脇のスクリーンで、次に歌われる楽曲の歌詞/シンガーが映し出されていくというシャレた演出が為された。トップ・バッターは、松本の出世作となった太田裕美<木綿のハンカチーフ>。そういえば、もぎりの所では、来場者にコットン100%の白いハンカチが配布されていたな。前半で印象的だったのは、この日唯一のコール&レスポンスで盛り上げ役となった原田真二、圧倒的な歌唱力で迫った大橋純子と、ただひと組のカラオケ仕様ながら初のフル・コーラス披露となったイモ欽トリオ<ハイスクール・ララバイ>。ビンタを応酬する振り付けも懐かしく、実は歌詞が届いたのはレコーディング当日だった、というエピソードが紹介された。

松本が日本語詞を手掛けたシューベルトの歌曲集『冬の旅』からの2曲を挟んで後半へ。ココの頭は、いわゆる大滝詠一トリビュートのコーナーで、ナイアガラ関連の楽曲が続く。トライアングルVol.1の伊藤銀次、Vo.2の杉真理と佐野元春が揃い、“ねじれトライアグル”(by 銀次)状態になった時は、思わず身を乗り出した。更にステージは、そのまま はっぴいえんど〜ティン・パン・アレー ファミリーとでも呼ぶべきベテラン勢のコーナーへ。ココでは<ソバカスのある少女>が、ティン・パンのアルバムに入っていたオリジナル通りの南佳孝&茂のデュエットで歌われて感動。だが一番の圧巻は、松本作品とは直接縁のなかった吉田美奈子が歌った2曲だ。松本自身、薬師丸ひろ子が歌っていた<Woman>は “自作の中で最も人気のある曲”、松田聖子<ガラスの林檎>は“数多い聖子作品の最高傑作”としていて思い入れが強いようだが、それを知ってか、美奈子の歌い込み方がハンパなく、ピーンと張りつめた空気が流れる。しかも<ガラスの林檎>は大胆なジャズ・アレンジが効いていて、これは井上鑑の真骨頂。間違いなくこのショウのハイライトと言えるだろう。

そして本編最後は、予想通りの寺尾聰<ルビーの指環>。ここで今剛と大仏さん(高水)が前へシャシャリ出て、寺尾と絡みながらプレイする。若干浮き気味の演出だったが、これはミュージシャンとの仲間感覚を大事にする寺尾のアイディアだったのかもしれない。

これが終わると一旦メンバーが引いてライトが落ち、再びセット転換。オーディエンスからは自ずと手拍子が始まり、ショウのエピローグともアンコールとも付かないまま、再度はっぴいえんどの登場となる。歌われたのは、松本の45周年記念トリビュート『風街であひませう』に収められた細野の<驟雨の街>。元々は はっぴいえんどの解散後、細野がソロ・コンサートで歌うための新曲として書かれた楽曲だが、『HOSONO HOUSE』には未収だったため、正式には未発表になっていた。ところが最近になって当時のデモ・テープが発見され、件のトリビュートで初めて陽の目を見る。この時のレコーディングで元メンバーが集まり、それが今回のライヴに繋がった。ちなみに完成版は、当時とは歌詞が大きく違っているそうだ。そして最後は、出演者全員で<風をあつめて>。

終わってみれば、休憩まったくナシ、23時終演の4時間ステージ。それでもフロントがめまぐるしく変わっていくから、ダレたところはなく、アッという間に4時間が過ぎた。何より、最初と最後を はっぴいえんどが締めるという構成が、とても美しく。松本本人は特に意識してなかったのだろうが、その仕事のひとつひとつの完成度が高く、尚かつ一貫性があるから、それが連なることに拠って偉業となる。
「(自分は)大したことはしてないけど、素晴らしいメンバーに巡り会えて、生きてこられました」
パンフレットを読むと、50年の節目には、はっぴいえんどのニュー・アルバムが聴ける可能性がありそうなので、それを楽しみしていよう。

■ Set List ■
1. 夏なんです / はっぴいえんど
2. 花いちもんめ / はっぴいえんど
3. はいからはくち / はっぴいえんど
4. 木綿のハンカチーフ / 太田裕美
5. てぃーんずぶるーす / 原田真二
6. タイム・トラベル / 原田真二
7. シンプル・ラブ / 大橋純子
8. ペイパームーン / 大橋純子
9. 三枚の写真 / 石川ひとみ(三木聖子)
10. 東京ららばい / 中川翔子(中原理恵)
11. セクシャルバイオレットNO.1 / 美勇士(桑名正博)
12. ハイスクールララバイ / イモ欽トリオ
13. 赤道小町ドキッ / 山下久美子
14. 誘惑光線・クラッ! / 早見優
15. 菩提樹 / 鈴木准、河野紘子(フランツ・シューベルト)
16. 辻音楽師 / 鈴木准、河野紘子(フランツ・シューベルト)
17. 君は天然色 / 伊藤銀次+杉真理(大滝詠一)
18. A面で恋をして / 伊藤銀次+杉真理+佐野元春(NAIAGARA TRIANGLE vol.2)
19. Tシャツに口紅 / 鈴木雅之(ラッツ&スター)
20. 冬のリヴィエラ / 鈴木雅之(森進一)
21. バチェラー・ガール / 稲垣潤一
22. 恋するカレン / 稲垣潤一(大滝詠一)
23. スローなブギにしてくれ(I want you) / 南佳孝
24. ソバカスのある少女 / 鈴木茂+南佳孝
25. 砂の女 / 鈴木茂
26. しらけちまうぜ / 小坂忠
27. 想い出の散歩道 / 矢野顕子(アグネス・チャン)
28. ポケットいっぱいの秘密 / 矢野顕子(アグネス・チャン)
29. Woman“Wの悲劇”より / 吉田美奈子 (薬師丸ひろ子)
30. ガラスの林檎 / 吉田美奈子(松田聖子)
31. Instrumental / 風街ばんど ※メンバー紹介
32. 卒業 / 斉藤由貴
33. September / EPO (竹内まりや)
34. さらばシベリア鉄道 / 太田裕美
35. ルビーの指環 / 寺尾聰
-- Encour --
36. 驟雨の街 / はっぴいえんど
37. 風をあつめて / はっぴいえんど+All cast