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9月5日(土)夕刻から、都内某所で行なわれた【鳴海寛を送る会】に参加してきた。山下達郎のライヴ・アルバム『JOY』でのギター名演で知られ、山川恵津子との伝説的ユニット:東北新幹線で再評価著しい鳴海だが、当人は7月末に亡くなっていたことが分かった。享年57歳。

鳴海は高3の時にヤマハのポプコンの応募し、関係者に高校生離れしたセンスを認められることに。その後ギタリストとして谷山浩子、佐々木幸男、八神純子のバンド・メンバーとして活躍。八神のサポートと併行して、バンドメイトの山川とのユニット:東北新幹線を組み、83年に名盤『THRU TRAFFIC』を発表した。当時はプロモーションなどほとんどなく、鳴かず飛ばずのままコンビは自然消滅。鳴海はスタジオ・セッションを続けながら、CINDYや楠木恭介(勇有行)、中山美穂らの作編曲を手掛けている。90年代には、frascoというユニットで3枚のアルバムを発表。その後は体調を崩したこともあって、断続的な活動に甘んじたが、04年には宅録による自主制作盤『ONE MAN BAND』を完成させた。最近は復帰へ向けて前向きに動いていたので、よもや…の訃報であった。

“送る会” には、当時の八神のバック・バンドだった Melting Pot の初代メンバーが全員集結。山川恵津子さんはもちろん、ヤマハ関係者やミュージシャン仲間、鳴海さんの高校時代からのバンド仲間、そのほか鳴海さんに所縁ある方々が多数参集。故人のピンナップに囲まれながら、鳴海さんを偲んで演奏したりお喋りしたりと、笑いあり涙ありの “送る会” となった。不肖カナザワも、突然 “再評価のキッカケを作った” と紹介され、弔辞ならぬ “送る言葉” を手向けることに。生前の愛器バードランドは現在お弟子さんの手に渡っており、この日もイイ音で鳴っていた。

ちなみに上掲の2枚のシングル盤は、右が発売当時にサンプル盤のみ制作された『SUMMER TOUCHES YOU / UP AND DOWN』のオリジナル7インチ。そして左側が、くしくもこの6月に発売されたばかりの、『SUMMER TOUCHES YOU / UP AND DOWN』復刻盤。これが半ば追悼盤のような形になるとは、夢にも思わなかった。オトナの事情でジャケは変えざるを得なかったけれど、これは2人のアーティスト写真を加工して、オリジナルの雰囲気に近づけたもの。今ならまだディスクユニオンのサイトに若干残りがあるようなので、ゲットはお早めに。

個人的には、電話やメールのやり取りは何度かあったものの、ジックリと落ち着いてお話しする機会は一度しか持てなかった。それなのに、穏やかで控え目な人柄がジワジワ伝わってくる。音楽に対しては、本当に何処までもピュアー。それこそ魑魅魍魎が多く住む音楽業界には、おおよそ不向きな性格だったと思う。それでも彼には、音楽しかなかった。

だからその才能を知るとしては、悲しいというより悔しい気持ち。しかも、これから動き出そう、という矢先の頓死である。だけど鳴海さんは、きっとはにかんだような笑顔で、集まったみんなを空から眺めていたに違いない。Rest in Peace…