bluenote fes
今日はライヴ特異日? 行きたいライヴ、お声掛けいただいたライヴが何本もあって、ちょっと迷ったが、やはりこのブルーノート・ジャズ・フェスの豪華な組み合わせには抗えない。まずは朝8時過ぎに家を出て新宿伊勢丹のカルチャー・スクールへ行き、11時から初心者向けAOR講座を90分。講師という人生初の大役をなんとかこなした後、そそくさと横浜赤レンガ倉庫に向かった。普段は年に1〜2度来るか来ないか…という横浜だけれど、最近2〜3ヶ月で数回来ている。いろいろご縁が生まれると嬉しいが…。

ひと仕事終えてからのフェス参戦だったので、超話題のトップバッター:ハイエイタス・カイヨーテはまったく観られず。赤レンガに到着した時は14時を大きく回っていて、パット・メセニーのオーケストラがそよそよと流れる中、展示ブースではハイエイタス・カイヨーテのサイン会に長蛇の列ができていた。

…というワケで、カナザワが見た最初のセットは、パット・メセニー withブルーノート・トーキョー・オールスター・ジャズ・オーケストラ。 セットリストを見ると、中に入った時は2曲目の途中だったか。ドラムは旧友ダニー・ゴットリーブ。エリック宮城が仕切るオーケストラには、本田雅人(sax)、小池修(sax)、村田陽一(trombone)、中川英二郎(trombone)、佐野聡(trombone)など、錚々たる一流プレイヤーが並ぶ。でも前半は、こういう野外ライヴで室内楽的なシンフォニック・アンサンブルを聴かされても…、という印象。パットよりも、ステージをうろついて時々指揮を振ったりトランペットを吹くエリック宮城の方が目立ったくらいだ。が、<Last Train Home>などファンにお馴染みの曲が出てくると、周囲はヤンヤの喝采。近年パットはどうも小難しい方へ行っていて、正直ちょっと out of my lineなのだが、やはりこの辺りのナンバーには自然に顔がほころぶ。ホーン隊のソロ回しは、パットを前にみんなかなりの熱演。まぁ、特別編成のビッグ・バンドなのでアンサンブルの消化不良は否めないものの、野外のメセニー公演というだけで価値は十分だろう。カナザワ的には、スタンディング200人程度のライヴハウスで全盛期のメセニー・グループを観ているから、所詮アレを越すパフォーマンスは体験できないとタカを括っているので、どうしても辛口になっちゃうのよ。

1. HAVE YOU HEARD
2. JAMES
3. HOMMAGE
4. LAST TRAIN HOME
5. FIRST CIRCLE
6. SONG FOR BILBAO
7. ARE YOU GOING WITH ME?

続いてはサブ・ステージでのスナーキー・パピー。彼らは、自らの音楽をジャズ+ファンク+ダンス+フュージョンを融合した《jafunkadansion》と命名し、ネオソウル、ヒップホップ、更にはテクノやハウスにまで触手を伸ばしている大所帯のリアル・クロスオーヴァー・バンドだ。オーケストラと共演した最新作『SYLVA!』は若干「?」だったけど、ハイヨーテが観られなかった自分としては此奴らが一番期待が大きく、それを裏切らないショウを観せてくれた。とりわけ、あらぬ方向へドラスティックに展開していく楽曲構成の斬新さが痛快。既成フュージョンはいわば予定調和の中でテクニカルなスリルを追い求める感があるけが、スナーキーのマテリアルは先が全然読めない。鍵盤やホーンの飛び道具的使用法は、むしろ70's的だったりするが、演奏スキルが確かなので破綻はなく、宇宙の先からでもシッカリ元へ戻ってくる。そうしたベクトルは、ハイヨーテとも共通するところ。偶然にもイベント中盤で、間も無くLight Mellow's Choiceからデビューする現役大学生ユニット:ブルー・ペパーズの井上君に出くわし、しばし立ち話。彼はハイエイタスに魅了されたと言ってたけど、きっとスナーキーも好きだろう。グループ・ショットなどでは10人超のメンバーがいるスナーキーだが、今回の来日メンバーは2鍵盤+3管を含む9人。

1. SHOFUKAN
2. THING OF GOLD
3. WHAT ABOUT ME?
4. SLEEPER
5. LINGUS
6. QUARTER MASTER

ここでメイン・ステージに戻ってロバート・グラスパー・トリオ。去年のEssenceでエレクトリック編成によるR&B〜ヒップホップ寄りのユニット “エクスペリメント” のステージを観て感心したが、今回は最新作『COVERS』を引っ提げてアコースティック・ピアノ・トリオで来日。サブではなくメイン・ステージの大舞台に抜擢されたのは、フューチャー・ジャズ・シーンきっての最注目アーティストというコトに配慮しての起用だろう。とはいえ、プリンスのカヴァーでスタートし、2曲目はハンコックと、『COVERS』からはあまり演らず。フレディ・ハバードのスピリチュアル・ジャズ人気曲<Little Sunflower>では、パット・メセニーまさかの飛び入りでオーディエンスを湧かせた。とはいえ、グラスパー自身は終始淡々とピアノに向かうプレイスタイルで、高揚感に乏しく、メセニー同様インドアで観たい内容ではあった。

1. SIGN ‘O’ THE TIMES
2. TELL ME A BEDTIME STORY
3. THE WORST
4. LITTLE SUNFLOWER
5. SILLY RABBIT

サブ・ステージに戻るとインコグニートが準備中。この前ブルーイのソロ・ライヴを観たばかりだが、彼は今年3度目の来日で、完全にリラックス・ムード。サウンド・チェックでも、開演を待つファンにカタコトの日本語を交えて語りかけながらマイク・チェックしていた。もちろん、ショウが始まってからも安定感抜群のジャズ・ファンクを繰り出し、得意のカヴァー曲を交えつつ、オーディエンスとレッツ・グルーヴ。トニー・モムレル、ヴァネッサ・ヘインズ、ケイティ・レオーネというフロントのヴォーカル陣も快調だった。ラストはジョージ・デュークに捧げた<Brazilian Love Affair>で幕。

1. TALKIN’ LOUD
2. GOODBYE TO YESTERDAY
3. GOOD LOVE
4. ALWAYS THERE
5. AS
6. COLIBRI
7. PERCUSSION & DRUM SOLO
8. STEP ASIDE
9. HATS
10. EVERYDAY
11. BRAZILIAN LOVE AFFAIR

そして大トリのジェフ・ベックは、最新ライヴ盤『LIVE+』と同じメンバーを率いての熱演となった。個人的には最近のジェフには今イチついていけてないトコロがあって、3〜4年ぶりに観るのだが…、でも、とにかく71歳で未だ進化中という佇まいが何より素晴らしく…。ただしオールド・ファンとしては、<Mornig Dew>や<Superstistion>、<Going Down>といった往年の名曲登場に嬉しさが募る反面、ジミー・ホール(元ウェット・ウィリー)の登場に少々興ざめしたりも…。イヤ、ジミー・ホールが下手とかダサイというのではないが、明らかにジェフのテンションに太刀打ちできてないように見せる。ココは歌の上手さより、やはりジェフと対等に渡り合えるキャラの人でないと厳しいかなぁ。

1. LOADED
2. EVEN ODDS
3. YOU KNOW YOU KNOW
4. MORNING DEW
5. A CHANGE IS GONNA COME
6. YEMIN
7. LONNIE ON THE MOVE
8. NINE
9. NADIA
10. LITTLE WING
11. CAUSE WE’VE ENDED AS LOVERS
12. SUPERSTITION
13. BIG BLOCK
14. CORPUS CHRISTI
15. A DAY IN THE LIFE
-- Encour --
16. ROLLIN’ AND TUMBLIN’
17. DANNY BOY / GOING DOWN

それにしても、日本では初めてのブルーノート・ジャズ・フェス。ロケーションも規模感もちょうどよく、かつてのマウント・フジに取って代わる夏のジャズ・フェスになるんじゃないだろうか。特に今回は、ハイエイタス、スナーキー・パピー、そしてグラスパーという、R&Bやヒップホップも聴くような若いジャズ・ファンと、メセニー好きのオールド・ファン、ロックも聴くジェフ・ベック・ファンと、世代的、ジャンル的にも絶妙な塩梅で…。老舗ロック・フェスが曲がり角に差し掛かっている、という話も聞くけれど、このフェスはまさにコレからが楽しみである。