wilton felder
既にご存知の方が多いと思うが、クルセイダーズのサックス奏者にして、セッション・ベーシストとしても活躍したウィルトン・フェルダーが、9月27日に亡くなった。クルセイダーズの近年のツアー・メンバーだったレイ・パーカーJr.が、自身のFacebookで明かしている。享年75歳。死因は不明だが、クルセイダーズのツアー同行をキャンセルしたりしていたから、以前から体調が優れなかったようだ。

ところで、アチコチのウィルトンの訃報を見ていると、“レギュラー・ベーシストが不在だったクルセイダーズではベースも担当” という記載が見つかる。でもコレには少々違和感アリ。レギュラー・ベーシストがいなかったからウィルトンがベースを弾いたのではなく、サックス奏者である彼がベースの名手でもあったから、レギュラーを置かなかったのだ。ジャズ・クルセイダーズ時代から続く長い歴史の中で、正式メンバーとなったベース・プレイヤーは、唯一ロバート・ポップウェルだけである。

それどころか 70年代のL.A.スタジオ・シーンでは、ウィルトンはサックスではなくベースで重用された。クルセイダーズのテキサス・ファンカーとしての音楽的シグネイチャーは、実はスティックス・フーパーのイナタいドラミングにあったと思うが、その分プレイはセッション向きではなかった。同じく、R&Bフィーリングを湛えたウィルトンのサックスも必要とされなかった。代わりに彼の重量感のあるベースが存在感を放ち、当時はジェイムス・ジェマーソンやチャック・レイニーを脅かすほどの仕事をこなしている。クルセイダーズのライヴでも、アンコールあたりでしばしばベースを弾くウィルトンを目にできた。

プロデュース業が忙しくなったウェイン・ヘンダーソン(14年4月没)がクルセイダーズを離れた後、ジョー・サンプルとウィルトン、スティックスの3人で<Street Life>をヒットさせ、商業的にも成功を手にしたメンバーだったが、スティックスが事業に専念、グループはジョーとウィルトンに委ねられた。だが2人の関係は次第にギクシャク。今だから明かせることだが、その頃から2人の間に宗教観の違いが発生し、それがバンド運営を困難にさせていたらしい。ウィルトンが演奏活動を再開したウェインとジャズ・クルセイダーズを復活させたのも、裏にジョーとの確執があったからとされる。でももうそれも浮世での出来事。この1年半でオリジナル・メンバー4人中3人が道連れのように相次いで亡くなったから、きっと空の上で同窓会セッションでも開いているのでは?

…にしても、ウィルトンのこの80年の代表的リーダー作『INHERIT THE WIND』と同様、ボビー・ウーマック(彼も雲上セッションに参加してそう…)が歌っている『SECRETS』(85年)が、未だCD化されていないとは。その中間の『GENTLE FIRE』も日本のみのCD化で、今では完全に激レアになっている。クルセイダーズ関係は権利許諾が厳しいらしく、日本からのリクエストもなかなか聞き届けられいそうだけれど、ウェインの未CD化作品とともに、そろそろ追悼リリースがあっても良いのでは? 

往年の名グループの面々が、一人また一人と去っていくのは、実に寂しいものよ…

Rest in Peace...