labi siffre
3連休の最後は、ビル・ウィザースやテリー・キャリアらと同様、 “フォーキー・ソウル” の代表選手とされている英国の黒人シンガー・ソングライター、ラビ・シフレ三昧。彼はレア・グルーヴのブームに乗って90年代末頃から再評価が始まり、既にほとんどの作品がCD化されている。ところがココへ来て日英で同時進行的に再発が行われ、75年の通算5作目にしてEMI移籍後の第1作目『REMEMBER MY LOVE』(上掲)が、フリーソウルの廉価シリーズで日本初CD化となった。

それまでの4作はパイ・レコードから発売され、72年の3rdアルバム『CRYING LAUGHING LOVING LYING』が人気。アルバム・タイトル曲と<It Must Be Love>がそれぞれ全英チャート11位/14位を記録し、前者はオリヴィア・ニュートン・ジョンやロッド・スチュワートがカヴァー、後者はマッドネスの大ヒットを生んだ。またカニエ・ウェストがネタにした<My Song>も収録され、若いリスナーへの門戸になっている。その頃までは自身のアコースティック・ギターを中心にマルチな才能を発揮していたが、本作頃になるとセッション・ミュージシャンを起用するスタイルに変化した。

このアルバムでの人気曲は、エミネムやウータン・クラン、ジェイ・Z、プライマル・スクリームらが相次いでサンプル使用し、ジョス・ストーンもカヴァーしたオープニング曲<I Got The>、イントロのドラム・ブレイクがその筋では有名な<The Vulture>あたり。でもホーンやストリングスを豪勢に使ったノリノリの楽曲は、従来のラビ作品からは異色な存在。本来はエレピのメロウ感に溢れる<Down>やアコギの音色が心地よい<Dreamer>、ラストに鎮座するバラードのタイトル曲などに彼らしさが滲む。レゲエを取り入れた<Sadie And The Devil>は、エリック・クラプトンがカヴァーしたジョニー・オーティスの曲みたい。

バックには元キング・クリムゾンのイアン・ウォーレス(ds)、50年代末からスタジオ・ワークで活躍して英ポップス界を支え、リッチー・ブラックモアやジミー・ペイジの指南役でもあったというビッグ・ジム・サリヴァン(g,arrnge)などが参加している。プロデュースは、そのサリヴァンと、ディープ・パープルやウィッシュボーン・アッシュを見出したデレク・ローレンス。実を言えば、彼らは当時 Lawrence- Sullivan Productionを共同運営していて。このアルバムも、サリヴァンの74年の3rdソロ『BIG JIM'S BACK』の参加メンバーがそのままメイン・キャストを務めている。もっともこの周辺事情はフリーソウル系のライター氏による解説では言及されず、スキャンしただけの裏ジャケはメンバー・クレジットさえ読めない…

冒頭で “ラビ・シフレ三昧” と書いたのは、パイ時代の4作のレビューを11月売りのレコードコレクターズ誌に執筆したため。リリース順に聴いていくと、シフレの音楽的変遷と共に、時代背景や音楽シーンの指向の移り変わりまで感じ取れて、なかなかに興味深い。