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脱サラして作家に転身した大学のサークル後輩と、地元でサシ飲み。SNSで再会し、先日サークルの大先輩の葬儀で卒業以来のナマ邂逅。ネトウヨ暗躍が目立つSNSも、こういう時には効用がある。気持ち良く酔っぱらって帰ったら、このサンプル盤が届いていた。

この2枚は、04年に44歳で夭逝した松原みきが、キャニオン在籍時の最後に出したもの。もちろん今回は最新リマスターで、高音質のHQ-CD仕様になっている。どちらも拙 監修・解説。

84年の通算7作目『COOL CUT』は、今回が初CD化。しかしながら、どうして今まで再発されてなかったのかが不思議なほど内容が充実しており、ファンの間では後期傑作として知られる。それまでフュージョン・スタイルの音に乗ってシティ・ポップスを歌っていたみき嬢が、メリハリの効いたエッジィなバンド・サウンドに乗り換えてニュー・フェイズを打ち出したからだ。音作りの要は、プロデュース及び大半の楽曲を作編曲している森園勝敏。ご存知、四人囃子や初期プリズムのギタリストとして知られ、ロック/フュージョン系リーダー作も数枚出している人だ。この当時はサウンド・クリエイター的にAORスタイルを模索していた頃で、彼の翌85年のソロ作『4:17 p.m.』は、完全にAOR指向の良質ヴォーカル・アルバムになっていた。

時代的にテクノへ向かう選択肢もあったし、事実そうした女性ポップ・シンガーも多かった。が、元々ジャズを歌っていた みき嬢は、キュートさとセクシーさが綯い交ぜのユニークなキャラクター、歌の起用さなどを鑑みて、こうしたブリティッシュ寄りのソリッドのポップ・ロック路線を取ったのだろう。グッと音数を絞り込んだクールなサウンド・メイクの中、パッショネイトな歌声がヴィヴィッドに泳ぎ回る。時々現れるエモーショナルなギター・ソロは、森園ではなく和田アキラ。松原みきといえば、<真夜中のドア>収録の1stアルバム『POCKET PARK』が定番だけれど、ベティ・ブープのジャケが印象的なこのアルバムも必聴だ。この初CD化で、彼女のオリジナル・アルバム銀盤化は完了した。

そして同発の85年作『LADY BOUNCE』は、カヴァー・アルバムを挟んでの通算9作目。『COOL CUT』がハイ・クオリティながらもセールス的に厳しかったためか、再びフュージョン・スタイルに回帰している。サウンド・プロデュースは、当時人気絶頂にいたカシオペアのkyd奏者:向谷実。櫻井哲夫/神保彰のリズム隊も一緒に参加し、野呂一生は書き下ろしを1曲提供した。野呂の代わりに参加したギタリストは、松下誠と鳥山雄司。その他、山木秀夫や岡本郭男(共にds)、高水健司(b)らがサポートしている。

狙ったのは、フレンチ・ポップスやヨーロピアン・ムードを漂わせた、エレガントなオシャレ・サウンド。みき嬢のヴォーカルも いつもより艶めかしく、ため息混じりのセクシー・スタイルだ。ただ今になって振り返ると、少々作り込み過ぎた感も。アルバムの評価より、ファンの間でベスト・ショットとされるジャケットの方が人気があったりする。それでもカシオペア・ライクな歌モノとしては、先頃ようやくCD化された大野方栄『MASAE A LA MODE』やジュディ・アントン『SMILE』、カシオペア分裂の引き金となった櫻井・神保のプロジェクト:SHAMBARA(ヴォーカルは国分友里恵と秋元薫)よりもポップな仕上がり。みき嬢ファンには、当然聴き逃せない作品である。リアルタイムでCDが出ていたが、リイシューは今回が初めてだ。

…というワケで、苦目のコーヒーを飲みながら、酔いを醒している状況。不覚にも寝落ちしそうな中、みき嬢の<真夜中のドア>をカヴァーしていたサークルの後輩バンドがいたのを朧げに思い出した。あれは確か、ミカという女の子がヴォーカルで、 “ミカ・バンド” と名乗っていたなぁ…