lizz wright
パリで発生した無差別テロで、世間も自分の心もザワついている中、リズ・ライトの日本公演東京初日@BlueNote Tokyoへ。リリースされたばかりの新作『FREEDOM & SURRENDER』を聴いて、“オオッ、これは” と変化を感じ、これもプロデューサーに招いたラリー・クライン効果か、と感心していた最中なので、実にナイスなタイミングだった。

ノラ・ジョーンズ・フォロワーの一番手的なデビューだったリズだけれど、ノラが奔放にジャズから大きくシフト・チェンジして行ったのに対し、ゴスペルにルーツを持つリズは、ずっとそこに踏みとどまっていたワケで。それでも近作はチョッと伸び悩んでいた感があり、その打破を目論んだ新作で、シッカリ結果を出してきた。一言で言えば、ジャズに軸足を置きつつも、ソウルやポップス方面に広く視野を広げた感じ。バックが陰影に富んだメリハリの濃い演奏を提供したことで、深みのある浮遊系中低音ヴォイスで凛とした佇まいを見せるリズのヴォーカルが、余計に際立った印象がある。

1st/2ndで若干曲が入れ替わったようだけれど、自分が行った2ndは、5年前の前作アルバム・タイトル曲でスタート。パリ事件の犠牲者に哀悼を意を表しつつ、中盤で『FREEDOM & SURRENDER』から4曲が披露された。アルバム毎にツボを付いてくるカヴァー曲は、ニール・ヤング<Old Man>とジョー・ヘンリー<Stop>をチョイス。本当は前に演っていたエリック・クラプトン(正確にはブラインド・フェイス)の曲、新作で取り上げていたニック・ドレイク<River Man>やニーナ・シモン<To Love Somebody>(原曲は初期ビー・ジーズ)も聴きたかったが、何をやってもリズ流に昇華しちゃっうから納得できる。

バックで目を引いたのは、オルガンに才を際立たせた鍵盤担当のシェドリック・ミッチェル。ギターの
クリス・ロッサーはロック系の人なのか、アドリブは若干たどたどしいけれど、アコギの刻みに光るものが。こうした編成も、もしかしたらラリー・クライン効果、なのかな? 彼や、今ブルーノート・レーベルを仕切るドン・ウォズ、リズもカヴァーしたジョー・ヘンリー、そしてTボーン・バーネットなど、ジャズやソウル、ゴスペル、フォーク、カントリーなどのルーツ/アメリカーナ色を孕みながら、今の時代にフィットした “ニュー・ヴィンテージ” を創り出す勢力には、目が離せない昨今だ。改めてCDを見たら、ソングライター陣にもノラ・ジョーンズのブレイクに貢献したジェシ・ハリス、大ベテランのデヴィッド・バトゥが尽力。今をトキめくグレゴリー・ポーターとのデュエット曲には、J.D.サウザーが名を連ねていた。

あと意外だったのが、キレの良いタンバリン使い。片手間にシャカシャカ鳴らすとウルサイだけで、リズの音楽にはまったく無用の長物と思いきや、極めてリズミックに、スタッカートを効かせて瞬間的に音を響かせる。喩えれば、ドラマーやパーッカション奏者がキットに組み込んで、スティックで強く叩いてオカズ的にアタック音を鳴らす感じ。静謐にジンワリ深く歌い込むタイプのリズなれど、その中にはリズム・コンシャスな一面が潜んでいること垣間見た瞬間だった。

ジャパン・ツアーは17日〜18(水)の丸の内コットン・クラブまで続く。

《2015.11.14. 2nd show》
1. Fellowship
2. Old Man
3. Somewhere Down The Mystic
4. The New Game
5. Real Life Painting
6. Stop
7. Freedom
8. Walk With Me, Lord
-- Encour --
9. The First Time Ever I Saw Your Face
10. (I've Got To Use My) Imagination