LM tazz
レーベル・コンピは9月でひと息ついたLight Mellow 和モノ ・シリーズながら、アーティスト・コンピとオリジナル再発は断続的に継続中。今月出るのは、<とまどいトワイライト>でお馴染みのシンガー・ソングライター、“TAZZ” こと豊島たづみの『Light Mellow 豊島たづみ』である。

77年にデビューし82年の寿引退まで、残したアルバムは5枚。デビュー時には"Lazy Pop" というキャッチ・コピーがついていて、フォーク色が強かった。宇崎竜童/阿木燿子コンビが書き、TVドラマの主題歌としてヒットした<とまどいトワイライト>も、ちょっぴり暗めの雰囲気。どこか、中島みゆき的イメージがつきまとう。

でもアルバムを聴くと、意外にバラエティに富んだ楽曲を歌って驚かされる。特に昨年『Light Mellow DRIVE』に収めたアッパー・チューン<夜もすがら>入りの3rdアルバム『STILL NIGHT』、筒美京平とのコラボを展開した4thアルバム『淑女のたしなみ』、そして旅立ちをテーマにした最終作『LONELY ONE』は、どれもシティ・ポップ的にハイ・クオリティ。元々<とまどいトワイライト>のヒットと同時にマイケル・フランクス<アントニオの唄 >を歌謡ボッサ風に歌っていたTAZZ嬢だから、洋楽センスは良かったのだ。

『LONELY ONE』発表時の全国ツアーの資料を見ると、この時のメンバーは故・鳴海寛(g/東北新幹線)、松田真人(kyd)、千代谷晃(b/元カルメン・マキ&オズ)、多田牧男(ds)という面々。鳴海と松田は山下達郎バンドにも籍を置いたし、多田は松岡直也グループや角松敏生のバックで活躍した。そんな実力派が、駆け出しの頃に彼女をサポートしていたワケである。

それゆえ、<とまどいトワイライト>のヒットは、まさに彼女を戸惑わせたはず。成功を喜ぶ一方で、後々この曲のイメージから抜けられずに苦しんだ気がする。その歌謡曲的作りは、今の感覚でシティ・ポップスを括っていくLight Mellowシリーズにもそぐわない。

なのでココは思い切って、代表曲<とまどいトワイライト>を収録しない英断を。実はそれを無言で後押ししてくれたのが、他ならぬTAZZ嬢だ。07年に復帰し、09年にはアルバムも出している彼女が、ある意味 偏向的なこのコンピに、未発表の新録曲を提供してくれたのである。言い換えれば、それは “今の自分を聴いてほしい” ということ。ならばコンピの選曲も今様の斬り口で、と解釈した次第である。

実を言えば、<とまどいトワイライト>は、最近アトランタのラッパー:ヤング・ジージー(Young Jeezy)が、かのビヨンセのご主人として有名なジェイ・Zをフィーチャーした<Seen It All>にサンプリング・ソースとして使っている(イントロのみ)。でも彼らがコレを選んだ理由は、「この曲を聴くと、日本のネオン街の夜や人々、文化が脳裏に浮かぶ」(プロデューサー談)というもの。何だが昭和演歌の象徴みたいで、和製ポップス文脈とはかけ離れている。

オールド・ファンからは文句も出そうだが、こういう機会はシティ・ポップス再評価の今だからこそ。若い世代にTAZZの音楽を広めるには、コレがベストだと信じている。そして<とまどいトワイライト>なら知っているけれど…、という方には、きっと意外性に満ち溢れたコンピになるだろう。

収録曲は以下の通り。

1. 黒のドレス  from LONELY ONE
2. サマー・ナイト・ラプソディ   from 淑女のたしなみ
3. 潮騒がひびくころ  from STILL NIGHT
4. アントニオの唄    from とまどいトワイライト
5. ジェントル・レイン  from LONELY ONE
6. Sail Away   from LONELY ONE
7. 淑女のたしなみ   from 淑女のたしなみ
8. アゲイン  from とまどいトワイライト
9. スモーキー・トーキョー・ナイト  from LONELY ONE
10. 海が見たい  from STILL NIGHT
11. 夜もすがら  from STILL NIGHT
12. ベル・エポック  from 淑女のたしなみ
13. 行き暮れて   from STILL NIGHT
14. ロンリー・ワン  from LONELY ONE
15. リバーサイド   from 淑女のたしなみ
16. 波間    from STILL NIGHT
17. おもいでは琥珀色  from ちぎれ雲
18. 再会   新曲



※上記オリジナル再発は、CD-R盤です。