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キング・クリムゾン『THE ELEMENTS OF KING CRIMSON TOUR IN JAPAN 2015』の初日@渋谷文化村オーチャードホール。もう観られないと思っていたクリムゾンだが、突然の来日決定で、即チケットをゲット。数多のプログレおたくと違って、「ロバート・フリップが元気なうちに…」と少々クールに構えてのクリムゾン初参戦だったが、その充実度はハンパなく。いろいろ驚かされたが、でもちょっと思うところもアリ、で。

ツアーの開始時点で東京本公演4回はソールド・アウト。追加された2公演のみ、まだ若干余裕があるという状況。おそらく一人で2回、3回と足を運ぶ人が多いのだろう。ホールに入ると、案の定95%以上が男性ファンだ。

ステージは、話題のトリプル・ドラムが前面に3台鎮座し、上手からギャヴィン・ハリスン、ビル・リーフリン、パット・マステロットが陣取る。中央のリーフリンの脇にはキーボードが置かれ、メロトロンなどストリングス系を兼任。元Mr.ミスターのマステロットは、たくさんの飛び道具を携え、かつてのジェイミー・ミューア的役割を担った。そして奥のひな壇には、上手からフィリップ翁、ジャッコ・ジャクスジク(g,vo)、トニー・レヴィン(b,stick)、そしてメル・コリンズ(sax,flue)。全員がスーツ姿で、ほとんど不動でプレイする。唯一身体でリズムを取っているのがトニー・レヴィン。終始椅子に腰掛けているフィリップ翁は、まさに大学教授のような風貌で、まったくもって目立たない。この編成だと、当然トリプル・ドラム・フィーチャーになるが、ギター陣は共に自分の役割に徹している感じで、インプロヴィゼーションはメル・コリンズの独壇場だった。

フリップが上着を脱いで袖をまくり上げ、いきなりの<太陽と戦慄パート1>でスタート。やはりドラムが圧倒的で、有無を言わせぬ迫力がある。席が良ければ3台のサラウンド感が味わえたらしいが、遥か遠くの上から見下ろす末席ではサスガに無理。ステージ全体が俯瞰できたのは良かったが、このバンドは動きらしい動きがないので、ヴィジュアル的にはツマラない。まぁその分、音だけに集中できるってモノだが。

…にしても、3曲目にして早くも<Epitaph>登場。来日前の北米ツアーのセットを覗き見したので、70年代クリムゾン・ナンバーの封印を解いたのは分かっていたが、勿体ぶらず、MCも皆無で、あまりにサラッと出てきたので少々拍子抜けしてしまった。そもそも今期のクリムゾンは、フリップ翁の下でクリムゾン・プロジェクトと21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドが合体したような趣があり、お歳を召したフリップ翁が、クリムゾンの歩みを集大成し、それを顔見世興行している感が強い。メル・コリンズの存在は、言わば昔の楽曲を演るための免罪符。一方でイアン・マクドナルドではなく、セッション上がりのコリンズを帯同させたあたりに彼の本音が窺える。ま、往年のファンとしては、とにかく70年代楽曲をフリップ率いるクリムゾンで演ってくれるのが嬉しいワケだが、かつては理論武装しまくってたフリップ翁が、まるでファンの願いを見透かしたように動いていると、“こんなに丸くなっちゃって大丈夫!?” と、余計な心配をしたくなる。

意外だったのは、ほとんど弾き語りのような<Peace>を演ったこと。ジャッコはそれなりに歌えるけれど、グレッグ・レイクのような美声でも、ジョン・ウェットみたいな男気もない。なのにこのチョイスはどうよ?  でも新曲に<Meltdown>なんて曲があるコトを考えると、もしかして、フリップから日本への無言のメッセージだったのかな? ハイライトは本編ラストの『太陽と戦慄』B面3曲再現〜<Starless>の流れ。これには軽く鳥肌立ちました。ジワジワ昇り詰めていく<Starless>のたどたどしいギター・ソロもそのまんま。エンディング後のスタンディング・オベーション、マジ納得です。

撮影タイムにカメラを取り出すフリップ翁を見て、好々爺みたいなフリップなんて見たくないな、と思ったのも束の間、アンコールでは『宮殿』から代表曲2曲。今になって本物の<21世紀の…>をナマで聴けるとは 今こうしてサラリと書いているが、こうしたクリムゾン・クラシックを生で聴けるのはスゴイこと。80年代以降のクリムゾンで演ってた往年の曲は、ホンの限られたモノだけだったのだから。

でもこのセット・リストの気前の良さ、演奏のまとまりの良さには、何か釈然としないモノが…。80年代の “ディシプリン期” がスッポリ抜けているのは、70's派の自分には違和感のないところだが、この予定調和ぶりは果たして…? 往年のクリムゾンといえば、延々とスポンテイシャスなインプロヴィゼーションを展開し、その内容の濃さでバンドのテンションを保っていたはず。それを今回は必要最小限のアレンジで、ほぼレコードのイメージのまま聴かせる。メンバーの頭数が多い分、決め事が多くなっているのは分かるが、ひたすら自分の理想を追っていたはずのフリップが、今はファンの顔色を見ているような気がしてちょっと複雑。“これこそクリムゾン!” という喜びと、“これでクリムゾン?” という疑問符が、自分の中で交錯する。今のクリムゾンを見ているというより、フリップ率いる、素晴らしくデキの良いクリムゾンのコピー・バンドを見ているような気分になってしまったことは否定できない。

ふと気づけば、<Red>も<One More Red Nightmare>もナシ。一部日替わりメニューなのは織り込み済みだが、この日は『RED』受難の日、でしたかね 自分を納得させたい気持ちもあって、じゃあ追加公演も観に行こうかと思ったら、すでに自分のスケジュールは一杯なんでした…

 《Set List on 12/7》
1. Larks’ Tongues In Aspic Part I
2. Pictures Of A City
3. Epitaph
4. Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind) I
5. Meltdown
6. Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind) II
7. Level Five
8. Peace - An Ending
9. Hell Hounds Of Krim
10. The ConstruKction Of Light
11. The Letters
12. Banshee Legs Bell Hassle
13. Easy Money
14. The Talking Drum
15. Larks’ Tongues In Aspic Part II
16. Starless
-- Encour --
17. Devil Dogs Of Tessellation Row
18. In The Court Of The Crimson King
19. 21st Century Schizoid Man