narada_evolution
前回ポストでベイビーフェイスの見事な復活作を紹介していて、オォ、そういえばこの人もアルバム出したんだっけ…と思い出したのが、ナラダ・マイケル・ウォルデン。かつてプロデュースした高中正義をゲストにブルーノートで公演したのは、もう3年半も前(12年2月)のことだ(来日時のポストはココから)。その時「来年もまた来る」なんて言ってたけど、結局何の音沙汰もナシ。その代わり、いつの間にかこんな新作をツルッと出していた。

ジャケに映るのは、どうも彼の愛息らしく。年齢を考えたら孫でもおかしくないが、どうもナラダは最近 美形の白人妻を娶ったようで、60歳代になって2人の幼子に恵まれたらしい。なるほど、それでツアーには出ず、自宅スタジオでシコシコとレコーディングに勤しんでいた、というワケか。

マハヴィシュヌ・オーケストラとウェザー・リポートで活躍したジャズ・ドラマーでありながら、ホイットニー・ヒューストンやアレサ・フランクリン、マライア・キャリー、ステイシー・ラティソウ、シャニース、アンジェラ・ボフィル、スターシップらのプロデューサーとして名を馳せ、ソロ・アーティストとしてもダンス・ヒットを飛ばしているナラダ。そんな彼にもヒップホップ期の風は冷たかったようだが、近年は、70年代に共演したジェフ・ベックのバンドでプレイしたり、ホイットニー急逝でTVに駆り出されるうち徐々に復活。来日時には久々のリーダー作を2枚引っ提げてきた。

この新作も、自分が運営する Tarpan Recordsからのリリース。なので、ベイビーフェイスの傑作に比べたら分が悪いのだが、EDM寄りの4つ打ちダンサーとか、ナイル・ロジャースをゆるくしたようなギター・カッティングの70/80'sサウンドが聴けるのは、如何にもバランス感に長けたナラダらしいところ。キャッチーな<Song For You>なんて、当時だったらヒットを狙えた気がする。そもそも、深い慈愛の精神で音楽作りに向かうナラダだから、自ずとポジティヴなエナジーに満ち溢れた、溌剌としたダンス・ポップ・アルバムができるのだ。

その中でもEDM仕上げの<Tea The House Down>と<Tighten Up>的ノリを見せる<Me And My Girl>の2曲は、ナラダとライオネル・リッチーの共作。カントリー風味のセルフ・カヴァー作が好評だったライオネルも、もうオリジナル新作から数年遠ざかっているので、もしナラダと手を組んで両人なりのチャレンジ作に臨んでいるなら期待が膨らむ。そしてボーナス曲を除く本編ラストは、ビートルズ<Long And Winding Road>のベタなカヴァー。そういうのを何のてらいもなく歌っちゃうところがナラダなんだな。