albert hammond
年の瀬だというのに、この季節感のないジャケット…。もちろん、新年を南の島で、というセレブな暮らしをしているハズもなく、要は年内最後の原稿締切が、年明け1月末〜2月初めに東京・大阪で来日公演を行うアルバート・ハモンドのウェブ記事で、それを今、鋭意執筆中というワケです。

アルバート・ハモンドいえば、まず挙がってくるのが、<カリフォルニアの青い空(It Never Rains In Southern California)>と<落ち葉のコンチェルト(For The Peace Of All Mankind)>の2大ヒット。AOR系や歌モノ好きなら、上掲の81年作『風のララバイ(YOUR WORLD AND MY WORLD)』や、その翌年の『アメリカの何処かで(SOMEWHERE IN AMERICA)』あたり。ヒット・チャート好きなら、ホリーズ<安らぎの世界(The Air That I Breathe)>(74年/全米6位)、レオ・セイヤー<はるかなる想い(When I Need You)>(77年/米英首位)、スターシップ<愛は止まらない(Nothing's Gonna Stop Us Now)>(87年/全米首位)、シカゴ<リヴ・ウィズアウト・ユア・ラヴ(I Don't Wanna Live Without Your Love)>(88年/全米3位)、ホイットニー・ヒューストンのソウル五輪全米TV中継のテーマ<ワン・モーメント・イン・タイム>(88年/全米5位)などを思い出すだろう。

でも今回、いろいろ彼のキャリアを調べていて面白さを再確認したのは、むしろ<カリフォルニアの青い空>のヒット以前の話。ロンドン生まれの英国人ながら、スペインのジブラルタルで育ったハモンドは、再びロンドンに出てマイク・ヘイゼルウッドと作曲チームを組み、そこから本格的な音楽キャリアをスタートさせている。これに併行させるように、スペイン時代のライバル:スティーヴ・ローランドと手を組み、ファミリー・ドッグという男女混成グループを結成。このファミリー・ドックの初アルバム(69年)に、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジョン・ボーナムら、間もなくレッド・ツエッペリンとなるメンバーがセッション・ミュージシャンとして参加していたから面白い。故にこのファミリー・ドッグはハード・ロック系と思われがちだが、音は完全にソフト・ロックなのだ。それでもアップ・テンポの曲ではベースがやたらドライヴしていたり、如何にもペイジというエフェクト掛かったギターが聴けたりするので、ZEPPマニアも興味深いと思う。

更に掘っていくと、スティーヴ・ローランドがピーター・フランプトンの出身グループ:ザ・ハードをプロデュースしていたり、ハモンド=ヘイゼルウッドがブルー・ミンクに楽曲提供していたり、はたまた10ccの前身であるホットレッグスと近しい関係だったりと、発見がいっぱい。更にローランドは、ドイツを拠点にするアリオラ・ハンザ・レーベルに籍を置き、デヴィッド・シルヴィアン率いるジャパンやトンプソン・ツインズなど、ニュー・ウェイヴ系アーティストの発掘に尽力したそうだ。

一方ハモンドは、アート・ガーファンクル、カーペンターズ、ジョニー・キャッシュ、ジョー・コッカー、ティナ・ターナー、エア・サプライ、アグネッタ(元アバ)、フォー・トップス、アレサ・フランクリン、ロイ・オービソン、ボニー・テイラー、セリーヌ・ディオン、ダイアナ・ロス等などに、幅広く楽曲提供。80年代後半以降は、女流ソングライターとして頭角を現したダイアン・ウォーレンとの共作が増えた。そんな中、フリオ・イグレシアスやカミロ・セストなど、スペイン人大物シンガーに愛されるのも、彼ならでは。やはり、時折顔を出す地中海的哀愁のメロディが、他のソングライターとは違ったテイストを運ぶのだろう。それにしても、ハモンドを軸にZEPPからロイ・オービソン、カーペンターズ、ダイアナ・ロスまでが一本の線で繋がってしまうのだから、半ばオソロシイ人脈である。

ま、80年前後のソロ・アルバムは、イメージとバックの顔ぶれでAORチックに売り出されたけれど、其の実 中身はヨーロピアン・メロウなポップ・フォーク。ちょっぴりクセのある地中海的旋律は、ひと昔の歌謡ポップスを思わせたりする。ソングライターではAOR方面への貢献もあるけれど、ソロ・アクトとしては、やはり<カリフォルニアの青い空>と<落ち葉のコンチェルト>の人だ。それでも『SONGBOOK』と名付けられた今ツアーでは、外部へ提供したヒット曲の数々もたっぷり聴かせてくれるらしいので、コレはやっぱり観ておきたい。ちなみにツアーのベース奏者は、元パイロットのデヴィッド・ペイトン。そういえば『風のララバイ』アナログ盤には、樹々が紅葉している秋冬ヴァージョンのジャケもありました。

アルバート・ハモンド来日直前インタビュー(スケジュールも確認可)