whispers_80
う〜ん、ホントに今年はノッケから訃報ばかり。まだ七草粥のタイミングなのに、ナタリー・コール、ロバート・スティグウッドに続いて3本目だ。ポストにしてないトコロでも、ジャズ・ピアノのポール・ブレイ(カーラ・ブレイの元夫)が逝っている。まぁ、自分の年齢を考えれば、憧れのアーティストや耳馴染みのミュージシャンが次々鬼籍に入ってしまうのは分かるのだが、それにしても今年は…、という感じ。今日お伝えしなければならないのは、ウィスパーズのニコラス・コールドウェルの旅立ちだ。

ウィスパーズというと<And The Beat Goes On>や<Lady>、L.A.&ベイビーフェイスの出世作となった<Rock Steady>や<In The Mood>といったR&Bヒットで知られる、カリフォルニア出身の5人組ヴォーカル・グループ。看板シンガーは “ソウル界のスーパー・マリオ・ブラザーズ” こと、ウォルター&ウォーレス “スコッティ” スコットだが、その双子兄弟を脇から支え、曲作りやプロデュースなどでも貢献。時々リードを取ることもあり、ステージの振り付けも考えていたらしい。上掲ジャケでは、一番右で笑っている立派なヒゲの大男がニコラスである。44年生まれだから、享年71歳。

ウィスパーズは61年結成。初録音は64年で、現在までに30枚近いオリジナル・アルバムを出している。黄金期は70年代〜80年代に掛けてのソーラー・レコード在籍期で、レーベルの勢いに乗ってコンスタントにアルバムを出し続けた。その最大のヒットが5週間R&Bチャートを牛耳った<And The Beat Goes On>(ポップ・チャート19位)。それを収めた作品が、このソーラーでの第3作『THE WHISPERS』になる。バラード・ヒット<Lady>もR&B3位/ポップ28位、ダニー・ハサウェイ<This Christmas>をトリビュート・ソングにリメイクした<Song For Donny>もR&B21位をマークした。

ウィスパーズに駄作ナシ、と言われるけれど、個人的にはコテコテのソウル・ファンにはあまり熱心に支持されなかった印象がある。それは彼らのハーモニーが非常にスマートで、ヴォーカルとバック・トラックの距離感が近いためと思われる。その代わり、時代の音を取り込むのが巧みで、ソーラーを牽引した歴代のサウンド・クリエイターたち、レオン・シルヴァーズ3世、レジー・キャロウェイ、L.A.&ベイビーフェイスらと上手に渡り合った。そのあたりを内側からコントロールしていたのが、実はニコラスだったと思われる。

これまでに数回来日していて、カナザワも2度ほど観に行った。しかし最後のジャパン・ツアーとなった11年末のコットン・クラブ公演では、ニコラスだけは振りを合わさず、終始スツールに腰掛けて歌っていた。当時は足腰でも悪いのかな?と思ったが、どうもその頃から心臓疾患を抱えていたよう。昨年初頭、余命幾許もないことを公表して治療を続けたが、その甲斐虚しく…というワケ。09年にリリースしたグループ初のゴスペル・アルバム『THANKFUL』が遺作となった。

なおウィスパーズ自体は、92年から4人組になっていたが、今後もメンバー補充なしに3人で活動を継続していく模様。

Rest in Peace...