leslie duncan
これはこれは、本当に心から待ち望んでいた世界初CD化。プランがあるのは相当前に聞かされていたけれど、その後まったく動きがないので、とっくに棚上げになってしまったと思っていた。でもそこはサスガ CelesteのM女史。あっぱれなことにジックリ腰を据えてリサーチし、丁寧な仕事っぷりで再発を実現してくれた。この調子で前後作も出して!と言ったら、怒られてしまうかな?

このレスリー・ダンカンは、“英国のキャロル・キング” なんて称されることもあるUKの草分け的女性シンガー・ソングライター。63年に7インチ・デビューしたものの鳴かず飛ばずで、ダスティ・スプリングフィールドなど著名シンガーのバック・シンガーとして身を立てていたところ、エルトン・ジョンが彼女のオリジナル<Love Song>をレコーディングして注目されるようになった。他にもリンゴ・スター、ピンク・フロイド、アラン・パーソンズらのアルバムで歌っている。

この『MOON BATHING』は、75年に発表された彼女のソロ4作目。GMでは2枚目のアルバムに当たり、『月影に想う』という邦題で日本発売された。プロデュースは彼女の夫でもある、プロデューサー/アレンジャー/鍵盤奏者のジミー・ホロウィッツ。ロッド・スチュワートやロニー・レインらフェイセズの周辺、リンダ・ルイス、スティーヴ・ハーレイなど、如何にも英国っぽいシンガーに手を貸した人だ。クリス・スペディング(g)、グレン・レ・フール(ds/ゴンザレス)らも後ろを固めている。

レスリーの歌声はとてもフェミニンで優しく、シットリした女らしさと少女のような可憐さが同居する。米西海岸の女性シンガーに喩えるなら、キャロル・キングというよりリア・カンケルとかローラ・アラン。早々にCD化された1〜2枚目は アコースティックでフォーキーだが、4作目になると それ+程よいファンキーな響きを持つようになって、軽やかなメロウネスが漂う。それでも明け透けな米国のシンガーとは違った英国産らしい佇まい、奥ゆかしさがあり…。

月明かりを浴びながら遠くを見つめる彼女の瞳に、英国産プレAORの良心を見た。