paul parrish
とっても素敵なアートワークに包まれたピアノ・マンの佳作が、ヴィヴィド・サウンド発のLight Mellow’s Choiceシリーズから間もなく。基本的にシンガー・ソングライター作品だけれど、77年録音という時節もあってか、一歩だけライトメロウ方向へ踏み出した印象がある。やはりピアノ系であるダン・ヒルやデヴィッド・ポメランツ、エリック・カズ、ランディ・エデルマンらの70年代作品群を愛でる方なら、きっとコレも同じ感覚で楽しめるだろう。

ポール・パリッシュにとっては、これが3枚目のアルバム。比較的知られているのが、71年の2nd『SONGS』で、ナイーヴな歌い口がシンガー・ソングライター愛好家の間で語り草となっていた。2年前には日本で初CD化。その2ndから、なんと7年ぶりの作品が、この『SONG FOR A YOUNG GIRL』になる。

元々ポールの楽曲は、レア・アースやケニー・ロジャース、ヘレン・レディ、アンディ・ウィリアムスらに取り上げられ、業界内ではそれなりに評価されていたらしい。が、当人は『SONGS』の商業的失敗に傷つき、しばらく隠遁生活を送っていたとか。それでも所属音楽出版社がポールを説得し、新興アリスタの新人スタンキー・ブラウン・グループにデビュー・シングル<Rock’n Rollin’ Star>を提供。同じ頃、モータウンからデビューしたジャクソン・ブラウンの弟セヴェリンのアルバムにも手を貸している。その辺りに目をつけたのが、売れっ子セッション・ギタリストにして、シールズ&クロフツを成功させたプロデューサー:ルイ・シェルトンだった。

ハッキリ言って、ポールのヴォーカルはヨレヨレである。でもその不器用さが、<Stormy Days>やタイトル曲<Song For A Young Girl>といったバラード・ナンバーの悲壮感、切実さを煽る。真剣さが直に伝わってくるのだ。そして存外に力強いピアノが、ヴォーカルの線の細さをしっかりフォローしている。

バックにはデヴィッド・ハンゲイト(b)、ラルフ・ハンフリー(ds)、ビル・クオモ(kyd)、マイケル・ボディッカー(syn)、スニーキー・ピート(steel g)など。シールズ&クロフツのジム・シールズも参加している。彼らの抑えた演奏は、ポールの歌とピアノ、スケール感のあるリッチなストリングスに寄り添うよう。コーラス隊には、ウォーターズ姉弟とブラックベリーズのクライディ・キング、シャーリー・マシューズらの名前もあって、彼女らのゴスペル・シンギングも聴きモノだ。

ピュアーなAORではないけれど、こういうアルバムを好きな人とはお近づきになりたいな。