madonna_true blue
モーリス・ホワイト逝去を受けてドップリとアース・ウインド&ファイアーに浸かって泣き明かしたいところなれど、ハマったら抜け出せなくなりそうだし、やるべきコトはテンコ盛りだし…。なのでグレン・フライの時と同じように、何事もなかったように日々を過ごそう。…というワケで、届いたばかりのマドンナ紙ジャケ・リイシューから、アダルト・コンテンポラリー目線での最高傑作『TRUE BLUE』を。

ぶっちゃけ 00年代以降のマドンナには積極的興味が持てず、直前に迫った10年ぶりの日本公演にも行く予定はない(地元さいたまスーパーアリーナなので車で10〜15分くらいで観れるんだが…)。けれど初期の彼女なら話は別。ニュー・ウェイヴっぽさをまとったディスコ・クイーン的スタンスで登場した時からチョッと気を引く存在で、デビュー・アルバムは国内盤が出てすぐに手にした。レジー・ルーカスのプロデュースというのが意外で、逆にレジーならもっとR&B的な手法があったのでは? と思ったが、そのキャッチーなハジケっぷりは気持ちよく、結果オーライ。そしてマドンナは次の『LIKE A VIRGIN』でナイル・ロジャースと手を組み、ダンス・ポップ路線にシフト・チェンジして一気にブレイク。

ところがそうなると、よく出来てるなぁ〜と感心つつも、判官贔屓傾向の音楽フリーク的には、どうしても応援する気持ちが萎えてしまう。でもそれを「やっぱりマドンナは大したタマだわ」と見直させられたのが、この86年発表の3rdアルバム『TRUE BLUE』だった。

プロデュースは、スティーヴン・ブレイ(ブレックファースト・クラブ)と元トリリオン(TOTOのファーギー・フレデリクセン在籍)のパトリック・レオナード。普通はココでナイル続投か、新しい大物プロデューサーと組むのがセオリーだが、マドンナが選んだのは、どちらも無名の新人クリエイター。でもその2人が、何処からともなく<Papa Don't Preach>という好曲を見つけてきたり、名曲<La Isla Bonita>を持参するのだから、マドンナの慧眼恐るべし。スティーヴンはマドンナのデトロイト時代の音楽仲間。パトリックはシカゴ出身で、ジャクソンズのツアー参加を経て、『LIKE A VIRGIN』ツアーのミュージカル・ディレクターを務めて信頼を得た。その後リチャード・ペイジとサード・マチネーを組んだり、ブライアン・フェリーやロッド・スチュワート、ピーター・セテラらを手掛ける売れっ子になる。

ちなみに、全米No.1ヒット<Papa Don't Preach>を書いたのは、AOR系シンガー・ソングライターのブライアン・エリオット。フリーソウル以降のAORシーンで再評価が進んだ人だが、彼は78年のソロ・アルバム『BRIAN ELLIOT』を出したきりでシーンから姿を消し、この曲が出るまではほとんど行方知れずだった。また<La Isla Bonita>はパトリックが我らがブルース・ガイチと共作したメロウなラテン・チューン。そこにマドンナが詞を乗せて、全米4位のヒットになった。哀愁のメロディが日本人好みで、一時はTVドラマのテーマ曲にも使われていた。

今回の紙ジャケ・リイシューは、オリジナル4作目『LIKE A PRAYER』までと、その後に出たリミックス集、ベスト盤の計6枚。ベイビーフェイスやデヴィッド・フォスターと組んだ楽曲もあるけれど、カナザワにとってのマドンナはココまでで充分だなぁ…。