morissey mullen
80年代初頭のブリティッシュ・ジャズ・ファンク隆盛期にあって、いぶし銀の如き存在感を放った職人プレイヤー・コンビ、モリッシー・マレン(ミューレン)。なかなかCD化が進まない人たちだけれど、今回はベガーズ・バンケット時代に出した82〜83年作が2枚組でリイシューされた。

ディック・モリッシーは英ジャズ界きって俊英サックス・プレイヤーで、60年代初頭から自分のカルテットでリーダー作を発表。ロンドンのジャズ・シーンとスタジオ・シーンを股にかけて活躍し、ジャズ・ロックのイフを経て、ギタリストのジム・マレンに出会った。マレンはスコットランドのグラスゴー出身で、アヴェレイジ・ホワイト・バンド( AWB)のメンバーとは当時からの付き合い。だが嗜好がジャズ寄りだったことから、彼らとは付かず離れずのスタンスを保ち、自身はブライアン・オーガーズ・オブリヴィヨン・エキスプレスやピーター・ブラウン&ビブロクト、ココモなどに参加した。

モリッシー・マレンとしては77年にAWBのプロデュースによる『UP』でデビュー。今回リイシューの2枚は、それぞれ4、5作目に当たる。シャカタクやレヴェル42、セントラル・ラインなどが人気を得たジャズ・ファンク勢にあって、彼らは併行してスタジオ・ワークでもそれぞれ活躍。言わばクルセイダーズ的なポジションで、マニアックな支持を得た。2作目『CAPE WRATH』(79年)ではジェフ・ベックよろしく、ゴンザレスやハミングバードをフュージョン的に展開した方向性にチャレンジしている。でも80年代に入って風を読んだか、少しポップ方面にシフトして作ったのが、この2作だった。アルバム毎に女性シンガーを迎え入れ、アルバム紹介の際には “UK産AOR” と書かれることが少なくない。まぁ、カナザワに言わせれば、AORというよりは、女性リード・ヴォーカルを立てるようになった時のシャカタクに一番近いと思うが、広義のAORとしてに捉えれば それもOKだろう。

82年作『LIFE ON THE WIRE』は、黒人シンガーCarol Kenyonを立てての作で、ややファンキーな仕上がり。8曲中5曲がヴォーカル曲だ。ピアノは後にソロ・デビューし、“英国のジョー・サンプル” と謳われたジョン・クリッチンソンが弾いている。翌83年の『IT'S ABOUT TIME...』は、白人セッション・シンガー:テッサ・ナイルズを前面に出してのアルバムで、10曲中7曲が歌入り。だが人気急上昇中のシャカタクに学んだか、女性ヴォーカルの使い方が絶妙で、れっきとしたリード曲もあれば、シャカタクよろしくサビを女性シンガーに歌わせるコーラス的起用の曲が出てきた。スティーヴィー・ワンダーのカヴァー<Do I Do>はインスト。ベースはこの後自分のバンド:ハバーズ・カバードでデビューするジョー・ハバード。鍵盤はデヴィッド・バイロン(元ユーライア・ヒープ)やクレム・クレムソン(元ベイカールー〜ハンブル・パイ)が組んだラフ・ダイアモンド出身のデイモン・ブッチャー。

その後彼らは、ベガーズ・バンケットの発展系であるコーダ・レーベルから2枚のアルバムをリリース。モリッシーは残念ながら00年に逝去。マレンはセッションでバリバリ活躍し、近年は故テリー・キャリアやヘイミッシュ・スチュワート(元AWB)のバンド、同胞インコグニートのブルーイと組んだシトラス・サンで来日し、何気にすごい職人技を披露している。