dirk hamilton
今年に入ってスタートしたユニバーサルの再発シリーズ【名盤発見伝】。ワーナーの【新・名盤探検隊】との連携を謳っていて、その流れに準じたアイテムを出していくようだが、そこはメッチャ豊富なカタログ数を誇るユニバーサル。今までにリリース予定が組まれたタイトルは、何故か半分くらい、韓国Big Pinkが紙ジャケで初CD化したタマをなぞっている感があるのだが、これからの展開には大いに期待したい。

でもそうは言ったって、貴重な本邦初CD化(帯の世界初はウソ/解説とのギャップが)もシッカリとラインナップに組まれている。中でもカナザワが真っ先に注目したのが、このダーク・ハミルトンの1st アルバム。そのココロは、スティーリー・ダンのプロデューサーとしてお馴染みのゲイリー・カッツがプロデュースしているからだ。

リリースは76年。スティーリー・ダンに照らせば、名盤『THE ROYAL SCAM(幻想の摩天楼)』と同じ年である。既に彼ら特有のワークショップ方式のレコーディングが始まっていたワケで、自ずと同じような顔ぶれの参加ミュージシャンを想像してしまう。

で、フタを開けてみると、ギターにラリー・カールトン、ディーン・パークス、エリオット・ランドール、ルイ・シェルトン。ベースにチャック・レイニーとデヴィッド・ハンゲイト。キーボードにデヴィッド・ペイチ。ドラムにジェフ・ポーカロ。パーカッションにはヴィクター・フェルドマンとミルト・ホランド。そしてバック・ヴォーカルにトム・ケリー、元サイド・エフェクトのジム・ギルストラップ等など。元バースのクリス・ヒルマンがそこに参加しているのが、ちょっとダーク・ハミルトンらしいかな? エンジニアには、やはりスティーリー・ダン・ファミリーのロジャー・ニコルスがいる。

こうなると、思わずそういった音、例えばマーク・ジョーダン『MANEQUINN』的な洗練された音を期待したくなっちゃうトコロ。でも時はまだ76年。そもそもダーク自身が ヴァン・モリソンに通じると言われたシンガー・シンガーソングライターだし、ボブ・ディランや初期ブルース・スプリングスティーンに相通じるテイスト、ほのかなカントリー色さえ漂わせている。スティーリー・ダンでいうなら、音の感触は『PRITZEL LOGIC』あたりがせいぜい。後のTOTOのコア・メンバーが参加して、という意味では、シールズ&クロフツにも近いかもしれない。

…というワケで、プリAOR的には、過剰な期待は禁物。だけれど、たとえ主人公はイナタイ系の人であっても、やっぱりこのメンツのスクエアな演奏を聴くと、やっぱり気持ちイイわ。