elp_brain salad
書きモノがテンコ盛りでブログ更新がままならぬ中、先週末あたりから、またイヤ〜な空気を感じていた。最初の予感は、チャカ・カーンやルーファスに縁深いシカゴ出身の黒人シンガー・ソングライター:ギャヴィン・クリストファーの訃報(3月3日、鬱血性心不全で死去。享年66歳)。続いて、ポストに上げたジョージ・マーティン逝去があり、それを追うように、今度はブラジルから名パーカッション奏者ナナ・ヴァスコンセロス死亡の情報が入った(3月9日、肺がんの合併症。享年71歳)。ナナはビリンバウの世界的プレイヤーで、一時パット・メセニー・グループに参加して活躍。来月エグベルト・ジスモンチと来日公演を行なう予定だった。

そして今度は、同じく来月 来日予定だったキース・エマーソンがっッッッ しかも10日夜、米カリフォルニア州サンタモニカの自宅で拳銃自殺したという。何でも神経系の病気で指が思うように動かず、最近は鬱状態だったらしい。享年71歳だった。

キースというと、エマーソン・レイク&パーマーの…というのが枕詞だけれど、キース自身が表舞台に登場するのは、67年にザ・ナイスを率いて。シンガーのP.P.アーノルドのバック・バンドに集まった面々が中心となり、当初はサイケデリックな方向性を目指した。しかしながら、作品を重ねるごとにキースの色が濃くなり、オーケストラとの共演なども。終いにキースはリズム・セクションの技量に満足できなくなり、スーパー・バンドの結成を目論む。それがエマーソン・レイク&パーマーのスタートだ。

カナザワが初めてELPを聴いたのも、この73年の通算5作目『恐怖の頭脳改革』。まだアルバムが出たばかりで、中坊だった自分にとっては、“ロック事始め” の一枚に数えられる作品でもある。と同時に、ELPにとっては最高傑作でも。このアルバムと、すぐ後に出た3枚組のライヴ大作『LADIES & GENTLEMEN』が、彼らのバンドとしてのピークだった。

それからのELPは、WORKS シリーズや汚作『LOVE BEACH』を出して悪戦苦闘するものの、結局解散。更に再結成や一部メンバーを入れ替えてのエマーソン・レイク&パウエル、ザ・スリー、エマーソン&レイクなど集合離散を繰り返したが、かつてのようなケミストリーは一切生まれなかった。クリムゾン、フロイド、イエス、ジェネシスといった他の大御所たちが、多少指向性を変えながらも次の時代へと生き長らえたのに、ELPはそうはならなかった。これはやはり彼らのサウンドが、シンセサイザーの進化やロック/クラシックの融合と表裏一体になっていたためかもしれない。エマーソンという人は あくまで職人肌の演奏家であり、理論家でも叙情派のストーリーテラーでもなかった。

来月の来日は、元気なうちにキース・エマーソンを観ておこう、と思っていただけに残念。今にして思えば、過去の栄光を追い掛けるより、職人に徹してサントラとか劇伴を作り続けていれば、何処かで新たな道が開けていたかもしれない。いずれにせよ、70歳代に入ったクラシック・ロッカーたちは、くれぐれも健康に留意してほしいところ。プログレ黎明期を主導したレジェンドの訃報にしては、ちょっと悲しいモノがあります。

Rest in Peace...