sadistics2
加藤和彦・ミカ夫妻の離婚でサディスティック・ミカ・バンドが空中分解した後、残されたミュージシャン4人衆、すなわち高中正義、高橋幸宏、後藤次利、今井裕が新たに結成したのがサディスティックス。スタジオ作2枚とライヴ1枚という短命に終わったが、それぞれが大きく羽ばたいていく直前の時期だけに、注目度の高いグループだった。

そのサディスティクス3作品が、16日にリイシュー。とりわけ、少し前に速報的に再発のニュースをご紹介した『LIVE SHOW』は、89年の初CD化以来の復刻ということで、早くもオーダーが集中している。実質的な解散コンサートのライヴだけれど、内容は良いし、今回はマスター・テープからのリミックスなので、音も格段にヌケが良くなった。

で、今日はあまり陽の当たるコトが少ない78年の2ndをピックアップ。当時、このタイトルから解散を予期した人はそれほど多くなかったと思うが、バンド周辺では “コレが最後” というのが暗黙の了解になっていたらしい。コンセプト・アルバムの1作目とは違い、楽曲はすべてメンバー個々の持ち寄り。桑名晴子がゲストで歌った<On The Seashore>が、後藤の曲に幸宏が詞をつけた以外は、すべて作曲者がそれぞれにリーダーシップを取る。他のメンバーは、言わばスタジオ・ミュージシャン的な立ち位置なのだ。

現にこの時期、高中は4作目『BRASILIAN SKIES』を出したばかりで、まさにイケイケ状態。続いて今井裕が『A COOL EVENING』をリリース。幸宏も本作の2ヶ月前に初ソロ作『サラヴァ!』を出している。彼はその制作プロセスに於いてシンセを使ったキッチュなポップスを演りたい自分を発見し、次第に細野晴臣に接近していくのだ。後藤の初ソロ作『 MR.MASSMAN』は、サディスティックス解散後の79年発表。

そんな状態だから、バンドとしての求心力には乏しいが…。でも、そこはやはり波に乗り始めたメンバーたちなのだろう、方向性はバラバラでも、実際に聴けばなかなか楽しめる。何とかメンバーをまとめようとしたのが今井らしく、彼の楽曲がアルバムの出入り口を固めている。しかもその楽曲タイトルが、<We Are Just Taking Off>とか<Floating On The Waves>とか。発想がまるで自分たちの今を言い表しているかのようだ。一方で高中の好曲<Blue Curacao>は、最近も時々ライヴで披露される。後藤が書き下ろした<Nao>は、明らかに幸宏&村上ポンタ秀一のダブル・ドラム。『LIVE SHOW』での編成は、決して俄仕込みではなかった(ノー・クレジットだけど…)。

今回のリイシューでは、スタジオ2作は最新リマスタリング仕様。こちらは何度か出直していたけれど、拙解説も含めてお楽しみいただければ… m(_ _)m