sun rai
前回ポストでメイヤー・ホーソーンの新作を書いていて、「オォ、これを紹介してなかった!」と思い出したのが、このサン・レイ。オーストラリアはシドニー出身のニュー・カマーで、現地ではThirsty Macなるバンドで複数のプラチナム・ヒットを放っているという実力派だ。日本では3月初旬に初作品がリリースされている。

サン・レイは、いわゆる “ネオAOR” とか “ニューAOR” と言われる昨今の潮流に属する人で、70〜80年代のウエストコーストAORとは相当に乖離がある。わかりやすく言えば、ベニー・シングスに近いポップ・マエストロという感じ。ダンス・ポップな曲ではメイヤーっぽさもあるが、一方でR&B的メロウ感は薄く、スロウ・チューンはむしろ英国初のシンガー・ソングライター、例えばクリス・デ・バーあたりを思わせる。曲によってはポール・キャラックとかマイク&ザ・メカニックス、アラン・パーソンズ・プロジェクトっぽい面も。

ならばむしろ、ティアーズ・フォー・フィアーズ系のニュー・ウェイヴ系ポップ・アーティストのアダルトな面を増幅した、といった方が分かりやすいか。彼らもクリス・デ・バーもキャラックも、そういう英国らしい肌触りがあるでしょ。それでいてキレの良いポップ・チューンも少なからず。この辺りがベニー・シングスやメイヤーのファン層と被ってきそうだ。実際サン・レイ自身も、ほとんどワンマンで作品を構築しているマルチ・クリエイターだし。

確かに型通りを期待するロートルAORファンは、違和感を抱くだろう。けれど、そういう先入観を取っ払って聴くと、かなり楽しめる。何よりメロディが70/80'sっぽい流れだし、アレンジの端々に当時のニュアンスが覗く。黒っぽいノリの楽曲では、スティーヴィー(ワンダー)を意識しているかな?  もっとも画像を貼ったリード曲<Go Nuts>は、とびきりのポップ・チューンですが。でもやっぱりカナザワにとってAORは、よりボーダーレスでエイジレスな音楽であって欲しい。