prince
プリンスが死んだ 第一報は4月22日未明のこと。元々浮世離れしていたトコロの多い人である。当然ガセだと思った。でも本当だった。時間が経つにつれ、徐々に詳細が分かってくる。ミネソタ州ミネアポリスの自宅兼スタジオ:ペイズリー・パークのエレベーターで倒れているのが発見されたのだ。現時点で死因は不明。オーヴァードース説も出ているが、真偽のほどは分からない。先週、体調不良によりピアノ弾き語りツアーのアトランタ公演を土壇場でリ・スケジュール。それでもシッカリとステージをこなし、ミネアポリスの自宅へと戻る途中、自家用機を緊急着陸させて救急搬送。治療を受け入院を促されるも、個室の空きがなく、処置だけで自宅へ戻った。その一連の体調不良と死因の因果関係も現時点では不明。享年57歳。あまりに若すぎる、突然の逝去だった。

憔悴している人も少ないが、カナザワ個人としては、プリンスにそれほど強い思い入れはない。出会いが5才若ければ衝撃を受けたかもしれないが…。爬虫類的なヌメヌメ感が苦手な身としては、ご多分に漏れず、最初は気色悪さが先に立った。それでも『CONTROVERSY』や『1999』、『PURPLE RAIN』は聴き倒したし、その奇才ぶりには一目どころか何目も置いていた。新聞に新曲CDを使えちゃったり、誰もが親しんでいる名前を捨ててシンボル・マークにしてしまったり、かなり無茶なコトもやってたが、業界の体制や権力に屈しないスタンスは一貫。現在の音楽シーンのフロントラインに立つミュージシャンのほとんどは、そうしたプリンスの姿勢に少なからず影響を受けている。

しかも一方で、ジェームス・ブラウンやラリー・グラハム、チャカ・カーン、メイヴィス・ステイプルズらのベテラン勢に再評価のキッカケを作ったり、作品発表の場を設けるなど、偉大な先人たちへのリスペクトも忘れていなかった。

日本にはもう10年以上来ていないが、カナザワは2014年の Essence Festival@New Orleans でプリンスを観ている。3日間のビッグ・イベントの初日トリ。約8万人収容の Mercedes-Benz Superdomeが紫色に染まり爆音に揺れる様は、まさに圧巻だった。そうそう、自分の出番の前に、ナイル・ロジャース&シックのステージにギターを持って飛び入りも。

このフェスはオーディエンスの97~8%が黒人という、真っ黒っけっけの音楽フェスで、白人マーケットにクロスオーヴァーしているようなアーティストは概してウケが良くない。シックも<Good Times>は受けるが、その少し前の日本公演では演らなかったダフト・パンク<Get Lucky>をプレイしても、反応は芳しくない。プリンスの登場はデヴィッド・ボウイ<Let's Dance>だったが、そこはプリンス、ドームは沸きに沸いたのを覚えている。しかしそのボウイとプリンスが、今年になって相次いで逝ってしまうとは…(絶句)

日本では5月末に出る新作『HIT n RUN - phase Two』。これも近作中では一番デキが良い。ファンクであれスロウであれ、ヒネったトコロが少なくて馴染みやすいのだ。この突然の死がなくても、きっと結構な評判を取ったハズである。

奇才と言われるワン&オンリーの存在ゆえ、ディープなファンが多く、シーンにも破格の影響力を持っていたプリンス。2015年2月のグラミー賞授賞式、『最優秀アルバム賞』のプレゼンターを務めた時の発言も印象的だった。
「Albums, Remember Those? Albums still matter.」
ダウンロード配信やストリーミングなどでアルバム作品が軽んじられる最近の音楽シーンを憂えて、最適の場でコメントを発したのだ。そうしたオピニオン・リーダーを失ったコトは、これからジワジワ、真綿で首を絞められるように効いてくるかもしれない。早すぎるプリンスの旅立ちは、そうした点に於いて、マイケル・ジャクソン以上に大きな、目に見えない影響を及ぼす気がしてならないのだ。

Rest in Peace...