ed greene
長らく温めていたアルバムが、我が【Light Mellow Searches】からようやく発売された。モータウンの名盤の数々やスティーリー・ダン『AJA』でもボトムを支えた職人ドラマー:エド・グリーンの初リーダー作『GREENE MACHINE』がそれである。

マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス、スモーキー・ロビンソン、ミラクルス、エディ・ケンドリックス等など、エドがボトムを支えたモータウン勢は多いが、その前からアレンジャーのジーン・ペイジと親しくなり、バリー・ホワイトに重用されるようになって、急速に売れっ子になった。

カナザワ的には、ジェフ・ベック『WIRED』で彼の名前を意識するようになったが、あれはナラダ・マイケル・ウォルデンのドラムにスネアとハイハットをオーヴァーダブするために参加したそう。スタジオにいたのは僅か1時間ほどで、ジェフと顔を合わせるチャンスはなかったという。でも日本では、コレで知名度を上げたところがあって…。この時エドを呼んだのは、プロデューサーであるジョージ・マーティンのアシスタントを務めていたクリストファー・ボンド。このコネクションは、ホール&オーツの<Sara Smile>(76年/全米4位)や初の全米No.1ヒット<Rich Girl>のレコーディングに繋がった。

スティーリー・ダン『AJA』では、エドは1曲、<I Got The News>に参加しているが、より面白いエピソードは、ドナルド・フェイゲン『THE NIGHTFLY』で。エドが参加した曲は敢えなくボツになったが、エドのドラムが気に入っていたフェイゲンは、そのグルーヴを活かすために<Maxine>を新たに書き、エドのプレイをループに編集して使用したという。あのフェイゲンにそんなコトをやせたのだから、コレまさに超一流の証し。

96年にナッシュヴィルへ移り住み、第一線から退く形になったが、地道に活動は続けていた。このアルバムもそうしたセッションから発展したもので、ギタリスト/ソングライターのアルフォンス・ケトナー、ベースのボブ・マリネリとのチームが基本になっている。アルフォンスはかのボビー・コールドウェル<風のシルエット(What You Won’t Do For Love)>(78年/全米9位)の共作者で、エドとはそれを収録した『イヴニング・スキャンダル(BOBBY CALDWELL)』で名を連ねた。この3人が揃うとすぐにクールで切れ味の鋭いグルーヴが生まれ、次々にギター中心のファンキー・インストが繰り出されていく。その記録が、このアルバムのベースになった。

3曲のヴォーカル・チューンは、エド自身が書いたもの。実はかなり前から作曲を手掛けているそうで、どれも結構な出来栄えである。特にナッシュヴィルのNo.1デモ・シンガー :ペリー・コールマンが歌う<Green Light>と<Love Is Here>、AOR好きにも愛されそうな出来。<Pretty Baby, Don’t You Leave Me>では、なんとエド自身のヴォーカルが聴けたりも…。

とにかく、グルーヴ自体の気持ち良さは、70年代から相変わらず。モータウンやシティ・ソウル系のサウンドが好きな方、クルセイダーズやスタッフなどのR&B系クロスオーヴァー作に親しんでいる方は、必聴の作だろう。こんなレジェンダリーな作品が日本でリリースできたことに、まずは喜びを禁じ得ない。

さて次は、エドの日本ツアーを実現させなくては!