kanke
スッカリご紹介が遅くなってしまった…。でもコレは、ポップス愛好家なら抱腹絶倒の必聴盤。何処までが本気で、何処からが笑うところか、その境目は曖昧ながら、先人たちの音楽に対する愛情、リスペクトの精神は、いつ何ドキも忘れない。その深い思いがビンビン伝わってくるから、カンケの音楽は面白いのだ。

カンケは、 CM音楽、TVやラジオ、映画、舞台などのサウンドトラックなどを手掛けている作編曲家/プロデューサー。アーティストへの楽曲提供もあり、ミュージシャンとして多面的な活躍を見せる一方、ラジオ・パーソナリティとしても活動している。編曲家:柏崎三十郎、作詞家:鹿音田鈴、プレイヤー:道 進也、コーラス :The Black Sand Beach Boys、エンジニア:青海川猩々と複数の名前を使い分けているところは、まるで大滝詠一だ。

97 年にシングル<サマーブリーズ>でメジャー・デビュー。この山下達郎の空耳ソング、当時はマニア受けで終わってしまったモノの、近年になって再評価の俎上に乗り、そのシングルが復刻された。B面曲<レッツ・キッス・ベイビー>は、我が『Light Mellow HIGHWAY』にも収録している。

そのカンケが、満を持して完成させた1stアルバムが、この『HOMMAGE(オマージュ)』。デビュー曲<サマーブリーズ>と<レッツ・キッス・ベイビー>の再録で幕を開け、そのままのノリで、ナイアガラ・サウンド、加山雄三、松田聖子、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、カーペンターズ…等などの音が次々に飛び出してくる。コピーではなく、ましてやパクリでもなく、愛情を持ってのオマージュ。しかもトコトンこだわって作り込んでいる。中途半端な物真似は、返って相手に失礼だ。そんな美学があるのだろう。楽曲ごとにイチイチ “Dedicated to...” とインスパイアの元ネタが披露されているのも、とても微笑ましい。

マーヴィン・ゲイの遺族に訴えられて敗訴したロビン・シックも、最初からクレジットに “Dedicated to Marvin Gaye” と記載しておけば、盗作騒ぎにならなかったかも…。愛情の籠ったパクリなら、アーティスト当人にとってはむしろ名誉のはずで、そんな名声より現金が欲しい人が騒ぐのが常だ。もし元ネタの人たちがこのアルバムを聴いても、みんなニコニコしちゃうと思うな。