blue peppers_7六月の夢/Blue Peppers feat. 佐々木詩織

カナザワがプッシュしているシティ・ポップス系ツー・メン・ユニット:ブルー・ペパーズのリード曲<六月の夢>で、リード・ヴォーカルを取っている佐々木詩織チャン。彼女の初ワンマン・ライヴ@下北沢440 に足を運んだ。デビュー前どころか、まだデモ制作中のシンガーのライヴを観ることはそう多くはないけれど、彼女に関しては半分関係者的な立ち位置で。竹内まりやや大貫妙子、epoらを育てた某プロデューサー氏にブルー・ペパーズのCDを渡したところ、彼女の歌をいたく気に入っていただき、そこからデモ制作へ発展した経緯があるのだ。

今日のバック・メンバーも、デモ制作と同じ、井上薫(kyd/ブルー・ペパーズ)、外園一馬(g)、山本連(b)、伊吹文裕(ds)という、全員20歳代にしてメッチャ円熟した若き手練れたち。少し前は、若いバンドマンというとみんなオルタナだったりガレージ系の音に向かっていたものだが、最近はその手のバンドにもメチャ技巧派がいたりする。彼らもそれぞれ、ベテラン〜中堅アーティストの信頼を得ている実力派ミュージシャンたち。考えてみれば、山下達郎『IT'S A POPPIN' TIME』も、彼が20代半ばの時の録音なんだよな。

でもそんなバンドを従えてもまったく動じることなく、シッカリした歌を届けてくれるのが、フロントたる詩織ちゃんの魅力で。ピッチが正確なのは当然のこと、あどけない歌い口から時にオトナっぽいアンニュイなヴォーカルまで、無理なく自然体で表現している。デモのリズム録りにも立ち会っていたので、どんなスタイル/選曲で来るかはある程度分かっていたのに、ゆるめのスロウ・ファンクにアレンジされたホール&オーツ<I Can't Go For That>を聴いた途端、カナザワ、完全にトケましたワ… 

他にもハーフタイム・シャッフルでデヴィッド・フォスター/ジェイ・グレイドン流にアレンジされた大野雄二『ルパン3世』のサントラ曲<ラヴ・スコール>、詩織ちゃんにピタリとハマったコリーヌ・ベイリー・レイ<Closer>など、素晴らしいチョイスが続く。オリジナルの<透明>は、最近のアシッド・ジャズ〜フィーチャー・ジャズ、例えばハイエイタス・カイヨーテとかスナーキー・パピーあたりを意識したのかな? 前半のMCはグダグダになってしまって改善の余地アリだったけど、歌と演奏はバッチリでした

メアリー・J・ブライジのカヴァーでスタートした2nd ショウでは、大貫妙子<突然の贈り物>に感動。デモ録音時にも、プロデューサー氏がボソッと「いろんな人が歌ってるけど、こんなにイイと思ったのはター坊のオリジナル以来」と言っていたが、それがココでも再現された。<So Nice>のボサノヴァ解釈にしたって、単に洒落っ気があるだけでなく、歌にエモーションがある。そんな風にホンノリ熱さを秘めつつ、それでいてR&B系シンガーほど歌い切らずに僅かな余韻を残す。そこに天賦の才というか、センスの良さを感じるのだ。

本編ラストはプリンスのカヴァー、アンコールではピアノ一本をバックしてのバラード、そして “待ってました!” の<六月の夢>。とても初ワンマンとは思えぬ、地に足のついたライヴでした。とはいえ初というコトは、まだまだ進むべき「先」があり、伸びシロもあるということ。詩織嬢にもバンドの面々にも大いに期待したいし、コチラもできるだけサポートしたいと思う。そしてもちろん、これから制作するブルー・ペパーズのフル・アルバムも。

斜陽の音楽業界にあって、こうした有望な若手たちがみんなヨコに繋がっている状況は、非常に明るい材料だ。CDバブル期のように大きなビジネスなんて必要ないから、彼らがシッカリ音楽活動できるシーンにしていきたいものです。

《Set List》
1. I Can't Go For That
2. I Thought It Was You
3. いつも通り
4. ラヴ・スコール(峰不二子のテーマ)
5. Closer
6. 透明(オリジナル)
-- intermission--
7. All That I Can Say
8. 突然の贈り物
9. So Nice(Summer Samba)
10. レイン・ツリー(オリジナル)
11. I Wanne Be Your Lover
-- Encour --
12. さよなら(Say Just Goodbye)
13. 六月の夢