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UK叙情派プログレの代表格キャメルが16年ぶりに来日。その『RED MOON RISING TOUR in JAPAN 〜一期一会〜』@六本木EXシアターを観た。来日決定のニュースを知り、学生時代にコピー・バンドを組んでいた身としては矢も盾もたまらず、チケットをゲット。最初は22日(日)のプログレ・フェス(キャメルの他スティーヴ・ハケットが出演)を観るつもりが、他のフェスとバッティングしたため、前回クラブ・チッタで観たハケットを諦め、キャメルの単独公演20日にスライド。早速チケットをゲットしたところ、昨日紹介したライヴともバッティングし、21日の方を買い直すハメになった。でも骨髄性線維症で再起不能と言われたアンディ・ラティマー(g)が、骨髄移植の末に奇跡的復活。しかも往年の名曲を中心としたセットが組まれると知り、これを観ずして…、という気になった。

実をいうと、アンディ・ラティマーがバンド存続を諦め、キャメルをソロ・プロジェクト化した時点で、彼らへの熱い思いは冷めていた。自分のとってのキャメルは、ラティマーの美メロな楽曲とギター、そしてやはりオリジナル・メンバーであるアンディ・ウォード(ds)が繰り出す変幻自在のリズム・ワークが二本柱だったから、ウォードが抜けてセッション・バンド化した姿にエラく失望したのだ。変拍子をヤヤこしく叩くドラマーはいくらでもいるけど、この人ほど軽やかでスムーズに変拍子を叩くロック・ドラマーは他に知らない。だからワンマン化してのキャメルは、叙情的な美メロこそ健在だったが、普通にビートを刻むだけのリズム・アンサンブルに面白味を感じられず、片肺飛行のように思っていた。だから自分がキャメルを観たのは、80年の2度目の来日が最後だった。つまり自分には36年ぶりの生キャメルだった。

今回のメンバーは、アンディ・ラティマーに70年代からの古参コリン・バース(b)、02年から参加したデニス・クレメント(ds)、そして新たに加入した盲目の鍵盤奏者ポール・ジョーンズ。心配されたアンディは、歌声こそ少し荒れていたものの、意外にも元気。もちろんメロディアスなギター・ワークも健在だった。逆に老け込んだのはコリンで、ちょっと見、まるでお爺ちゃん。ま、ベースは結構ブリブリだったので安心したが。ドラムのデニスはウォードより重めのリズムを叩くが、手数はやや多めで、シッカリ昔のキャメルをコピーしていて好感が持てた。

何よりビックリしたのが、新参ポール・ジョーンズ。オープニング<Never Let Go>からリード・ヴォーカルを披露した上、多彩な鍵盤プレイでキャメル・サウンドを再現。特にオルガンの音にはこだわりがあるらしく、アドリブを弾きながらのスイッチイングで、4小節毎に少しづつトーンを変化させていく。その見事なプレイに気を取られ、「コイツ、良い演奏してるのに、ほとんど動きがなくて愛想がないな…」と思ってしまった次第。ところが最後の曲が終わり、メンバーがステージ前へ出てくることで、彼はスタッフに導かれている。「あっ、そうだった」と、そこで彼がブラインドであるのを思い出したほど。それくらいバンドへ自然に溶け込んでいたのだ。

セットリストは、いきなりの<Never Let Go>に狂喜乱舞。続いての<The White Rider>に度肝を抜かれ、4曲目<Uneven Song>に感動の涙。それこそ前半は、すべて学生時代にコピーしていた曲で驚いた。しかもアレンジがどれもオリジナルに忠実で…。初期楽曲なんて、編成も当時と同じ4人だけだし、きっとマーキーに出演していた頃はこんな感じだったんだろうな。それにポール・ジョーンズ加入で三声のハーモニーを聴かせたりも。これは従来のキャメルにはなかった魅力ではないか。

ここまで往年の曲を揃えてくれるなら、やっぱり<Echoes>や<Hymn To Her>も聴きたかったところ。それでも、<Long Goodbye>を「クリス・レインボーに…(昨年没)」と言っていて、涙がチョチョ切れた。そしてアンコールは、定番の初期名曲<Lady Fantasy>。まさに自分の青春がココにあったのを再確認した。う〜ん、スケジュールが許すなら、もう一回観たかったぞ。


《Set List》
1. Never Let Go
2. The White Rider
3. Song Within A Song
4. Uneven Song
5. The Snow Goose
Rhayader / Rhayader Goes To Town / Preparation / Dunkirk
6. Spirit Of The Water
7. Air Born
8. Lunar Sea
9. Drafted
10. Ice
11. Mother Road
12. Hopeless Anger
13. Long Goodbye
- Encore --
14.Lady Fantasy