harvey mason_earthmoverharvey mason_masonjar
ソニーの廉価盤企画【クロスオーヴァー&フュージョン・コレクション1000】の第2回発売が、いよいよ。先月発売分も自分がライナーを書いた分しか紹介できていないのに、もう新たな50タイトルが出てしまう。しかも今回は、前回の3倍近い枚数のライナーを執筆。トータル100タイトル中19枚を担当させていただいた。感謝!今日はその中から、まずハーヴィー・メイソンの2枚をピックアップしたい。

今回のシリーズに組み込まれたのは、76年発表のソロ2作目『EARTHMOVER』と、翌77年作『FUNK IN A MASON JAR』の2枚。後続『GROOVIN' YOU』も良いけれど、クロスオーヴァー&フュージョンという括りでは、やはりこの2作がベストだろう。ちなみにこのクロスオーヴァーとフュージョン、ジャンル用語的には同義語とされるが、よく使われていた時代背景の違いもあって、個人的には決定的な差があると思っている。紋切り的に言えば、文字通りジャンル・ミックスの実験色が濃いのがクロスオーヴァーで、その融合が進んで渾然一体となったのがフュージョン。だから音楽的な完成度はフュージョンの方が上と言えるが、その分クロスオーヴァー期の火を吹くようなスリルに乏しくなり、商業性が高くなって拡大再生産に陥った。極論すれば、スムーズ・ジャズはその成れの果て、と言えなくもない

それに鑑みると、『EARTHMOVER』はクロスオーヴァー期の好作。『FUNK IN A MASON JAR』はそこからワン・ステップ踏み出した印象で、歌モノへと舵を切っている。参加ミュージシャンの並びにも、その意図が反映されていて。『EARTH MOVER』はリー・リトナー&ジェントル・ソウツ周り、クインシー・ジョーンズ・ファミリー、スティーヴィー・ワンダーのワンダーラヴ周辺、ブルーノートでの仕事を繋いだと思しきジェリー・ピータース、そしてハーヴィー自身が発掘したシーウインドの面々らをキャスティング。が『FUNK IN A MASON JAR』では、連続参加組に加えてアース・ウインド&ファイアーのメンバーやジョージ・ベンソンのグループ、ボブ・ジェイムス、後にTOTO/エアプレイ・ファミリーを形成することになるデヴィッド・フォスター周辺のミュージシャンが新たにクレジットされているのだ。

が、それでも『MASON JAR』に “ポップな売れセン狙い” という印象はなく。ヘッドハンターズ、ジョージ・ベンソン、ジェントル・ソウツなどで大活躍した勢いを駆ったのは確かながら、妙に考え過ぎたり作り込み過ぎたりせず、ミュージシャンシップを全開にしている。聴きやすくなっても、しっかりスピリットを貫いているから、聴いていて爽快なのだ。歌モノではメリー・クレイトンが歌うハーヴィーとフォスターの共作<Till You Take My Love>、フュージョン系ではジェントル・ソウツの面々が繰り広げる<Phantazia>が白眉の出来。グルーシン作の後者は、黒人ヴァイオリン奏者ノエル・ポインターがひと足先に吹き込んでいた。『EARTHMOVER』でもジェントル・ソウルとの<Bertha Baptist>が秀逸だったから、やはりこの手はハーヴィーの十八番だろう。

『MASON JAR』は時々聴き直す機会があるが、『EARTH MOVER』は結構久しぶりに手に取った。でも今の気分は、むしろ70年代中盤にあるので、自分の心は『EARTH MOVER』再評価に向かっている。未聴の方は、関連作含め是非この機会に。