rodney franklinrodney franklin_learning
一十三十一ちゃんやらハイエイタス・カイヨーテやら、観たいライヴが同時展開の日だったが、引き続き 書きモノで引き籠り中。ところが集中力がまったく上がらず、無駄に時間ばかり過ぎていく。こういう時は思い切って身体を動かして、そのあとビールでもぐびぐび飲みながら、爆音でハード・ロックとかプログレ聴いて気分転換を図りたいが、あーら、今日は行きつけのジムの定休日じゃないの…

…ってなワケで、ソニー廉価盤企画【クロスオーヴァー&フュージョン・コレクション1000】第2回発売分からのご紹介第3弾。今回ライナーを書かせてもらった中で、ちょっと嬉しかったのが、このロドニー・フランクリンの出世作『YOU'LL NEVER KNOW』(80年)だ。彼にとっては2作目に当たるが、96年にア・トライブ・コールド・クエストが<The Watcher>をサンプリングしたり、<The Groove>がクラブ定番になったりと、若い世代から再評価が著しい一枚でもある。

ロドニーはハービー・ハンコックやチック・コリアに傾倒していただけあり、この頃はピアノ(アコースティック&エレクトリック)にこだわってプレイ。スピリチュアル・ジャズやクラシカルなソロ・ピアノなど硬派な路線を選び、ここでもそうしたアカデミックな楽曲とファンク・チューンで彼の二面性を表現している。シンセ類には触ってないのに、何故かベース・ギターをプレイしているのもユニークだ。

バックには馴染みの薄いミュージシャンが多いが、ベースにポール・ジャクソン、パーカッションにケネス・ナッシュというハンコック人脈が参加。タイトル曲でロドニーとデュエットを披露するのは、84年にモータウンへ傑作ソロ作『AIN’T NO TURNIN’ BACK』を残すフィリス・セント・ジェイムスである。ロドニー作品で準レギュラー的存在のドラマー:トニー・セント・ジェイムスは、フィリスの弟。そしてプロデュースは意外にも、ストリングス・アレンジで定評のある英国人ポール・バックマスターだ。この人は、ローリング・ストーンズからエルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイ、ニルソン、カーリー・サイモンら大物たちと渡り合ってきた。

アルバムは前半(アナログ盤A面)がアコーティスティック、後半がコンテンポラリー・スタイル中心の構成。そこから曲名通りファンキーな<The Groove>がR&Bチャート41位/ダンス・チャート27位とヒットし、とりわけ英国ではトップ10入りの人気を得た。その曲調は、何やらシャカタク調。そう書くとロドニーがシャカタクのヒットを意識したと思いがちだが、実は彼らのデビューがこのヒットと同じ年なのだ。ブリティッシュ・ジャズ・ファンクのブームを主導した名コンピ『SLIPSTREAM〜The Best of British Jazz Funk』(シャカタク、レヴェル42、セントラル・ライン、モリッシー・ミューレン、インコグニートらを収録)の発売が翌81年である。

果たしてロドニーのヒットが英国産ジャズ・ファンクに日をつけたのか、ロドニーがそういう空気感を鋭く読んだのか、あるいは単なるシンクロニシティか。興味深いところだ。

なお同発されるスタンリー・クラークがプロデュースした82年盤『LEARNING TO LOVE』は、12年の初CD化時にもライナーを書いており、ブログにもポストがあったので、こちらのリンク先をご参照あれ。ちなみにスタンリーの『SCHOOL DAYS』、クラーク=デューク・プロジェクト、ジョージ・デュークの『BRASILIAN LOVE AFFAIR』『SHININ'ON』あたりも、まとめて解説書いてます。