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このベン・シドランのモントルー・ライヴ(77年)も、ソニーの廉価盤企画【クロスオーヴァー&フュージョン・コレクション1000】第2回発売分から。ベンのアリスタ時代のカタログの中では、半ば蚊帳の外に置かれたような作品なのだが、それは他のアルバムに比べてジャズのイメージが強いからだろう。いつもベンの一連のリイシューから外され、ジャズ・フュージョンのシリーズで拾われるコトになる。

そのココロは、モントルー・ジャズ・フェスでのライヴという「場」の問題。そしてもうひとつは、好ライヴ盤『BLUE MONTREUX』のアリスタ・オールスターズがバックを務めたことだ。アリスタ・オールスターズとは、マイク・マイニエリを中心に、ブレッカー・ブラザーズ、ウォーレン・バーンハートという当時のアリスタと契約を持っていたミュージシャンがフロントに立ち、スティーヴ・カーン、トニー・レヴィン、スティーヴ・ジョーダンがサポートする布陣。この年のモントルーに設けられた《アリスタ・ナイト》の看板アクトというワケである。ココに収録されたランディ・ブレッカーとのデュオ<I Remember Clifford>、マイケル・ブレッカーが豪快にブロウするディズニー・ナンバー<いつか王子様が>、そしてマイニエリのヘッド・アレンジでバンド一丸の演奏を聴かせるビートルズ・チューン<Come Together>あたりは、そうしたスペシャル編成ゆえ、だろう(ベンと楽器が被るバーンハートは不参加)。

でもベンが自分のソロ・ツアーでこんな布陣を集めることは、正直難しいワケで。実際オープニングの<Eat It>のピアノ・ソロのキレ具合と言ったら、「エッ、ベンってこんなに弾けるの!?」とビックリするほど。これはトニー・ウィリアムスに捧げられた新曲で、その躍動感だけでも このライヴ盤の評価が上がってしまう。おそらくベンにとってもスペシャルな一夜だったことは想像に難くない。

そうした確かな手応えを感じたか、ベンはこのあとトミー・リピューマがA&M傘下に立ち上げた新レーベル:ホライゾンへ移籍すると、マイニエリをプロデュースに迎えたヒップなジャズ・カヴァー集『THE CAT AND THE HAT』を作っている。もしこの白熱のライヴ盤がなかったら、きっとあの名盤も生まれなかったに違いない。そういう意味でこのライヴは、単なるドキュメントではなく、ベンのキャリアに於いてひとつの布石になった作品と言えるのだ。