jeremy steig
世間ではモハメド・アリが亡くなったというニュースが駆け巡っているが、個人的にはコチラの方がショック。ジャズ・フルート奏者のジェレミー・スタイグが亡くなっていたのだ。しかも2ヶ月近く前の4月13日に…。日本人女性と再婚し、7〜8年前から横浜で平穏に暮らしている、というのは知っていたけど、まさか!って感じ。42年生まれというから、享年73歳。現時点では死因は不明だが、晩年は自宅スタジオで録音したり、絵を描いたり…。そして身辺を整理し、静かに息を引き取ったらしい。奥様が引き継いだブログによると、「何事もなかったように…」という言葉を残して逝ったそうだ。

ジェレミー・スタイグというと、一番有名なのはビル・エヴァンスとの共演盤(69年)になるか。カナザワが以前から聴いていたのは、CTIで77年に出した『FIREFLY』くらい。でも10年くらい前にホワイト・エレファント周辺を調べていて、意外にもこの人に繋がり、その音楽性の奥深さを知った。

初リーダー作はかなり早くて63年。その後はポール・ウインターのセクステットで修行するが、ジャズだけに留まらず、リッチー・ヘヴンス、ティム・ハーディンらをサポートしたり、サテュロスなるバンドを率いてサイケなジャズ・ロックに挑戦したり。で、そこにマイク・マイニエリ一派のウォーレン・バーンハート(kyd)、そしてエディ・ゴメス(ac-b)が参加していたりする。人脈的にもサウンド的にも、なかなか掘り甲斐のあるミュージシャンなのだ。

レア・グルーヴ方面で再評価が著しいドス黒いジャズ・レーベル Groove Marchant から71年にリリースしたコレも、まさにヤバい一枚。ドン・アライアスとジーン・パーラというストーン・アライアンスのリズム隊にエディ・ゴメスが混ざり、そして鍵盤がヤン・ハマー。オマケに録音はエレクトリック・レディランドで、エディ・クレイマーがエンジニアを務めている。何つったって、タイトルがズバリ『FUSION』ですから!

もうそれこそ全編キレた演奏で、濃厚にファンクしたり、火を吹くようなインプロヴィゼーションを聴かせる。そもそもジェレミーのフルートは攻撃的なプレイで知られ、フルートの音と共に激しい息づかいまでが耳に飛び込む。というか、意識的に唸り声を発しながらフルートを吹いていて、熱くなるとジェレミーの雄叫びとフルートのユニゾン状態になるのだ。その異様なテンションの高さは唯一無二。そもそもフルートでジャズ・ロックを演じた人が少ないうえ、傍若無人?なこのパフォーマンス。…となれば、もう空前絶後としか言いようがない。

60年代末〜70年代初頭にジェレミーが出した作品は、どれもそんな感じで、アヴァンギャルドでエクペリメンタル。もっとも自分も発掘の道半ばではあるけれど。そんな鬼才が今は日本でノンビリと日々を送り、マイペースで音楽を創っている。そんな姿にどこか共鳴していた。

それにしても、日本の従来のフュージョン系メディアや評論家は、そのルーツや進化のプロセスを辿る時にマイルス系ばかり掘り下げて、この辺りには全然光を当てない。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク系はほとんど無視で、片手落ち感が強いのだ。ホワイト・エレファントにしたって、“フュージョン黎明期の実験的プロジェクト” という一方向からの説明だけでは、まったくもって物足りない。ハッキリ言って、あまりロジカルではないレア・グル系DJ諸氏の方が、分け隔てなく音に接していて、クロスオーヴァーの本質に迫っている気がするな。

Rest in Peace...