paul simon stranger
割と唐突にリリースされた感のあるポール・サイモンの新作。相変わらずの尖り具合というか、その先鋭性はもしかして、あの『GRACELAND』以来? というほどの力作かも。11年発表の『SO BEAUTIFUL OR SO WHAT』も米国では評価が高く、やはり『GRACELAND』以来かと言われたが、その時の米欧ツアーはそのまま『GRACELAND』25周年の活動へ繋がっていった。最近はスティングと一緒にツアーしたのが話題になったが、そうした流れがすべてココに結実している気がする。

とにかく、今年75歳になるポール・サイモンが、ますます意気盛んに周囲の音楽を吸収し、創意に満ちたニュー・アルバムを出してきた感じ。プリミティヴなパーカッションだけをバックに歌う曲があったり、フラメンコのタップ音を基にしたナンバーもある。アンビエントな空間でジャズのエッセッスを吐き出し、フィーチャー・ジャズ勢にも通じるトラックを作ったりも…。それでもロックやファンクではなく、表向きはあくまでフォーク。スティングっぽいテイストのマテリアルもあるな。ただしその裏側では、デヴィッド・ボウイ『★』にも負けないクリエイティヴィティな音を創っている。必要最低限の音数で、ひとつひとつの楽器をトコトン雄弁に語らせるワケだ。

驚くのは、最近は引退状態にあったサイモン&ガーファンクル時代からのプロデューサー:ロイ・ハリーを引っ張り出して、共同制作にあたっていること。彼は『GRACELAND』や『RHYTHM AND SAINTS』でポールの右腕となった良き理解者だから、ココでも彼の感性が必要だったのだろう。

スタジオ・テイクとボーナスのライヴ・ヴァージョンが収録されている<Listband>は、現代ならではのシステムを揶揄した曲。タバコを吸うために楽屋から屋外に出たロック・スターがオートロックで締め出され、表に回ったらリストバンドがなくて屈強な警備員に阻まれる、という曲。そこから転じて持てる者と持たざる者、そんなに大きな差があるのかと批評眼を向けている。日本にも贅沢を戒める “起きて半畳寝て一畳” という故事があるが、それの現代版といったところだろうか。

ポール自身はいつものように訥々と歌っているだけだけど、その後ろにある広大な世界観に勇気をもらった気がした。