sergio mendes vintage74
脱線ついでに。リオ五輪が開幕し、いきなりのメダル・ラッシュに世間が盛り上がっている。カナザワ的にはTV観戦している時間などないし、そもそも大して関心もないが、この機に乗じてのブラジルもの廉価再発にはチョッとだけ加担しているので、ご紹介しておこう。

解説を担当しているのは、ソニーさんの【BRASIL COLLECTIOM 1000】にラインアップされたセルジオ・メンデス&ブラジル'77の『VINTAGE '74』。そもそも最初にこのアルバムの再発を提案したのがカナザワで、03年の初CD化時に解説を書かせて戴いた縁深き一枚。そこで今回のヴァリュー・プライスでの出し直しにも協力することになった。

70年代に入ってグループ名をブラジル'66から'77に改めたセルジオ。当然ながら目指すサウンドもラウンジーなソフト・ロック・スタイルから、より内省的で主張の強いモノへと変わっていった。そしてブラジル'77名義4作目となる『VINTAGE '74』で、一気にニュー・ソウルへ傾倒。早い話、スティーヴィー・ワンダーに心酔しちゃって、<Don't You Worry 'Bout A Thing>、<Superstition(迷信)>、<If You Really Love Me(真実の愛)>と、いきなり3曲もカヴァーしちゃったのだ。しかも『TALKING BOOK』が出て間もない頃。<Don't You Worry…>なんてスティーヴィーがシングル・カットする以前に録音したと思われ、スティーヴィーがチャートを賑わせている最中に本作が発売されたようである。衝撃受けたら即カヴァーというのが、如何にもセルジオらしい身のこなし方。でもこれが好奏して2人の間に親交が生まれ、セルジオがスティーヴィー『FIRST FINALE』(74年)にポルトガル語の訳詞を提供。3年後の『SERGIO MENDES & THE NEW BRASIL ‘77』にスティーヴィーの客演が実現した。

これらに見事なコントラストを付けるのが、アントニオ・カルロス・ジョビンの3曲、<The Waters Of March>と<Double Rainbow>、<Voce Abusou(おもちゃにしないで)>。うち2曲にはジョビン自身がアコースティック・ギターで参加している。他にもジョージ・ベンソンでお馴染みのレオン・ラッセル作<This Masquerade>とか、デニス・ランバート&ブライアン・ポッターの<Funny You Should Say That>とか。

この時のブラジル'77のメンバーに、後年シカゴに加入するロウディ・ヂ・オリヴェイラ、L.A.のスタジオ・シ−ンで活躍するポウリーニョ・ダ・コスタがいるのも気になるところ。更にリー・リトナーやジョー・オズボーンも参加している。プロデュースはボーンズ・ハウ、オーケストラ・アレンジはデイヴ・グルーシン。

70年代も後半になると、メロウ・グルーヴ路線を突き進んでディスコ・サウンドにもアプローチを仕掛けるセルジオだが、その布石となった重要作が、この『VINTAGE '74』なのだ。