jacob collier

こりゃぁ〜、スんゲェもん観ちまったな

…という衝撃のステージを目の当たりにした。パット・メセニーやハービー・ハンコック、チック・コリア、スティーヴィー・ワンダーなどが絶賛し、クインシー・ジョーンズのバックアップでデビューしたジェイコブ・コリアー、2度目の来日公演@BlueNote Tokyo 2nd Show。半年前の初来日時には既に早耳ファンの間で名前が出始めていたが、確か自分はTOTOの武道館と被って足を運べなかった。評判も凄まじく良かったが、何せまだCDリリース前。なのでまずはアルバムを聴いてみないと、と思っていた。

で、7月にアルバム・リリース。率直に言って印象はあまり良くなかった。ワンマン・オーケストラという前評判通り、あやゆる楽器、あらゆるヴォーカルを一人でこなしていて、そこは確かにスゴイ才能。これで94年生まれの弱冠21歳 シンジラレネェ〜と思った。まさに “天才” と言ってイイだろう。ヴォーカル・ハーモニーはテイク6の影響大。サウンドにはポップス、ソウル、ジャズ、ヒップホップなどいろいろな要素が覗くけれど、スナーピー・パピーやハイエイタス・カイヨーテ、それにディアンジェロあたりとの共通点が随所に感じられる。とりわけポップ・カヴァーのアレンジの大胆さはダーティ・ループスに通じるし、空間をネジまげるような和音使いは最近のフューチャー・ジャズ勢と同じ匂いがする。

でもね、なんか音に若さがないの…。一人で作り込んでいるから躍動感を出すのが難しい、なんてコトは百も承知。でもそれよりも歌声が案外オッサンっぽくて、何処となくリック・アストリーを思い出してしまったり。才能は確かだけれど、前評判が高かった分、CDを聴いて少々期待を削がれた感じがしていた。

ところがどっこい、スティーヴィー・ワンダー<Don’t You Worry ‘Bout A Thing>でライヴがスタートした途端、ちょっと唖然。まるでバック・バンドがいるかのようにセッティングされた楽器の間を、飛んだり跳ねたりしながら溌剌と音を創造していくジェイコブ君、その姿はまさに21歳の若者そのものだった。早口でまくしたてるようなMCも何だか微笑ましくて。

肝心の演奏も、忙しく2小節ないしは4小節ずつ生楽器をプレイし、それをルーパーでドンドン重ねていき、最後はちゃんとしたオケにしてしまう。そして最後に最新鋭のヴォーカル・ハーモナイザーを駆使した一人ヴォーカリーズを乗せ、完全なるワンマン・オーケストラを完成させてしまうのだ。

実はそうしたライヴの手法は、CDを聴いておおよそ推察できたし、YouTubeの画像でも一部見ることができる。あらかじめ用意した音源も同期して鳴らしているだろう。それでもそれを実際に目の当たりにすると臨場感満点。ステージ上に据えられた数台のカメラで、ジェイコブの姿が何人もスクリーンに映し出され、ルーパーやヴォーカル・ハーモナイザーの音とシンクロする。ステージにはジェイコブ一人しかいないのに、耳も目もバンド・サウンドを体感。だからエンターテイメントとしても見どころタップリで、PVを生で観ている感覚になるワケだ。

オマケにこの回は、何とハービー・ハンコックがアンコールで飛び入り。前日BlueNoteで単独公演、1日おいて東京JAZZに出演する間隙をぬって、ジェイコブのショウに足を運んだのだ。そしてそのハービーと<Georgia On My Mind>をプレイ。情感を湛えたハービーのピアノをバックにゆったりと歌い、鍵盤ハーモニカで美しいソロを取る。実はハービー、自分のすぐ近くの席に陣取っていたのでライヴ中の様子も手に取るように分かったのだが、リズムに合わせて体を揺らしたり、手拍子を打ったりして結構ノリノリ。きっとジェイコブの才能を認めつつも、孫のような彼が可愛くて仕方がないのだろう。現在制作が進んでいるハービーの新作にも、ジェイコブが参加しているそうだ。

厳しいコトを言えば、ピアノやベースのスキルの高さに対して、ドラムはまだドタバタしているようだけれど、ジャイコブはまだ21歳。これからまだまだノビシロがある。本当に末恐ろしいマルチ・プレイヤー&シンガーだ。

ちなみに家へ戻ってCDを聴き直してみたら、ライヴ前とはまるで印象が変わってしまった。というコトは、できることなら、ライヴを観てからCDを聴くのがベターなのかな? あるいはYouTubeで画像をとっぷり堪能してから、CDをゲットするとか。とにかくナマのステージの観る方が何倍もスゴイです。