jeff larson_09
昨日アップしたジェリー・ベックリーのニュー・アルバムと是非セットでお聴き戴きたい快作、ジェフ・ラーソンの『HEART OF THE VALLEY』が本邦初登場。このところ最新作『CLOSE CIRCLE』、そして自らからが選曲したベスト盤と好調な日本リリースが続いているジェフ・ラーソンだが、このアルバムはさすがに新録ではなく、09年作品。が、00年代半ばに某ドメスティック・メジャーとの契約が切れてからは、ずっと日本リリースがなく、この充実の09年作もスルーされてしまっていた。それをこの機会に、というワケである。

その理由はコレ。実はこのアルバムは、ジェフとジェリー・ベックリーがガップリ四つに組んだ、言わば共演作なのだ。クレジットを見ると、プロデュース、アレンジ、エンジニアリングをすべてジェリーが一手に引き受けている。例外は、ジェフが弾くウーリッツァー・ピアノと、10人ほどのスペシャリストたちによる演奏のみ。しかも驚くことに、曲作りまでをほとんどジェリーに委ね、ジェフ自身はが半ばシンガーに徹している。敬愛するジェリーの提供曲は今までにも歌ってきたが、今回の自作はたった1曲で、ジェリーとの共作が3曲。果たしてコレはどういうこと?

もちろんそこには狙いがあった。コンセプトの源流は、ニルソンが70年に発表した4作目『NILSSON SINGS NEWMAN(ランディ・ニューマンを歌う)』。このニルソン作品には、楽曲を書いたランディ・ニューマン自身が参加して濃密なコラボレイションを展開し、カヴァー集の領域を超越した素晴らしい共演盤となっていた。ジェフとジェリーはそのレヴェルを目指し、ジェリーが書き溜めていた楽曲と作りかけの作品からマテリアルを選りすぐり、2人のコラボ作に仕上げたのだ。だから耳を傾けると、甘酸っぱくも青臭いジェリー印のメロディが流れてくる。でもヴォーカルはジェリーのシュガー・ヴォイスではなく、イイ意味でオトナのジェフの歌声。そのハーフ・ビターで落ち着いた感じがイイ塩梅なのだ。

気になるゲストには、ジェリーの盟友デューイ・バネル、ジェリーやロバート・ラム周辺で活躍するハンク・リンダーマン(g)、ポコのラスティ・ヤングがスティール・ギターを弾き、スプリット・エンズ〜クラウデッド・ハウスのニール・フィン、MFQのメンバーにして写真家としても有名なヘンリー・ディルツの名もある。あれれ、1曲ドラムを叩いているジム・マッカーティって、あのヤードバーズの人?? そしてジェフとコーラスのハーモニーにウットリしていると、ジェフリー・フォスケットによる “天の声” が一番美味しいトコロを盗んでいって…

ジェフとジェリーが醸し出した穏やかなウエストコースト・サウンドは、これまでのジェフのソロ作より遥かに充実しており、彼らが狙った以上のケミストリーを生んだよう。アメリカ・ファンはもちろん、昨年デビューして若い世代に急浸透しているツー・メン・ユニット:ヤング・ガン・シルヴァー・フォックスがお気に入り、なんて向きにもオススメしたい作品の日本初登場。オリジナルに4曲ボーナス・トラックを追加したスペシャル日本仕様で、カナザワの解説も掲載デス。