bluenote fes 016
3連休の初日は、午前中から家を出て、BlueNote Jazz Festival in Japan @ 横浜赤レンガパーク野外特設ステージへ。心配された雨もなく、薄曇りで少し暑いくらいの空模様。去年より客足が落ちた感じがしたのは、出演アーティストに前回のジェフ・ベックのようなロック勢がおらず、ほぼジャズ〜ソウル系に集約されたからだろうか…。もっともジョージ・ベンソンの頃には結構な入りになってきたので、単純にベンソンとアース・ウインド&ファイアーだけが目的、というエルダー・ファンが多かったのかもしれない。

去年同様ココのステージは、メインの Bird Stage と、指定席、スタンディング・エリアを挟んで反対側に設置されたサブの Diz Stage。音が被るため2つのステージでのライヴが交互に進んでいくが、移動距離が少なくて助かる。

オープニングは、Dizでのゴーゴー・ペンギン。UKマンチェスター出身の20代のバンドで、アコースティック・ジャズをベースに、クラシック、ロック、テクノ、ドラムン・ベースなど多彩な音楽から影響を受けている。ちょっとインテリっぽい学生ジャズ・バンドの風情で、時に初期パット・メセニー・グループを感じさせたりしたが、やはりそこはヒップホップ世代。クラブ・ジャズ経由のグルーヴを併せ持っていて、エレクトロニカのエッセンスをアコースティック楽器で聴かせる、なかなか先鋭的な今ドキのトリオだった。

Bird Stageには早くもマーカス・ミラー登場。しかもデヴィッド・サンボーンとコラボレイトした<Run For Cover>でスタートと、いきなりトップ・ギアに入れてきた。ビシビシとキマる しなかやかなスラップ・ベースは、さすがマーカス。でもネ、個人的な思いを書いてしまうと、今のリード・ベースみたいなプレイ・スタイルは、正直あまり好きじゃない。自分は、後ろからフロント陣を鼓舞するようなバックアッパーに徹したマーカスに惹かれるのだ。つまり、GRP初期や渡辺香津美、あるいはラルフ・マクドナルドやルーサー(ヴァンドロス)と演っていた頃のような、ニューヨーク・セッション時代のプレイ。もちろん『TALES』は好盤だったし、最新作『AFRODEEZIA』も気に入っている。でもそれはマーカスのプロデュース・センスの賜物かと。若手を率いてのこのステージも、ちょっと自分が求めるマーカス像とは距離があった。バス・クラリネットを吹くあたり、始めた頃は「ヘェ〜」って感じで観ていたけれど、今はもうマスターベーションにしか見えなくて。でもあの開放感溢れる野外ステージと、ビリビリと痺れるようなマーカスのソリッドな低音は、殊の外 相性が良かった。

続くDizでは、MISA × 黒田卓也のスペシャル・コラボ。黒田はニューヨークを拠点にする気鋭にトランペット奏者で、US BlueNoteとダイレクトに契約した初の日本人ミュージシャンとして話題になった。ホセ・ジェイムスのバンドに参加してご存知の方も多いだろう。出たばかりの新作『ZIGZAGGER』からの曲を演奏したあとMISIAが登場し、オーディエンス大盛り上がり。黒田のバンドにMISIAが乗っかる感じで、普段の彼女とは少し毛色が違うものの、一方でゴスペルという共通項を持つ2人でもあるから、タッグとして面白いモノになる。そして後半は<包み込むように>など、MISIAの代表曲をフィーチャー・ジャズ寄りのアレンジで。最後はマーカスが飛び入りして<オルフェンズの涙>を。MISIAに関してはほとんど門外漢のカナザワだが、この顔合わせのまま ガチでアルバム作らないかしらん?

さて Bird Stage では、いよいよジョージ・ベンソン。武道館とか(しかも1度は最前列)@パルテノン多摩とか、過去数回ライヴを観ているが、最近はチケットが高くなっててスッカリご無沙汰。中身が想像できるので あまり期待してなかったけど、初っ端から<Breezin'>で優雅に迫る大御所らしいパフォーマンスに納得させられた。メンツもデヴィッド・ガーフィールド(kyd)やマイケル・オニール(g,vo)、スタンリー・バンクス(b)といったキャリア組を従えていたが、一番光っていたのはパーカッションもヴォーカルもイケるリリアン・デ・ロス・レイズ嬢。ちょっとこれからが楽しみな女性である。対してベンソン、ギターもそれなりに聴かせてくれたが、ハンド・マイクで歌い始めると、何だか演歌のディナー・ショウ的空気がチラホラ…。<The Gettho>で湧かせる反面、ノラ・ジョーンズ<Don't Know Why>なんかも歌っちゃって、個人的には「それ要らんがな…」なんて。とはいえ終盤の<On Broadway>のギター・ワークには熱いモノがありました。

代わってDiz の アンドラ・デイ。次のアースに備えて、芝生でまったりしながら聴いてたが、“エイミー・ワインハウスから毒気を抜いた” という評判は、当たらずとも遠からず。その分真っ当なR&Bやゴスペル、ソウル・ジャズ色が濃い感じがした。ビリー・ホリデイ、ニーナ・シモン、エタ・ジェイムス、ローリン・ヒルらに影響を受け、スティーヴィー・ワンダーのバックアップでデビューというのも頷ける。実力的には申し分ないが、この手の濃い口R&Bシンガーが増えてきてるので、エイミーのようにロック・ファンの支持を取る付けられるかどうかが今後のカギかな? いずれにせよ、こりゃチャンとアルバム聴かにゃあ。

で、トリのアース。カナザワ的には12年5月の東京国際フォーラム以来になるが、実はイイ意味でちょっと予想を覆す内容で…。世間では未だに “モーリス・ホワイトのいないアースなんて…” と宣う輩がいるが、実はそういう人ほど最近のショウを観てなかったりするので、最近のアースに今なりの聴きどころがあることは分かっていた。でもそれを下支えしているのは、4年前を見る限り、生き残り組3人ではなくて 彼らを取り巻く若手のサポート・メンバーたち。特にフィリップ・ベイリーJr.は、少々翳りが見えてきた親父に代わってリード・ヴォーカルを任される場面が多く、これからは彼が看板を背負っていくことを予感させた。音的にも、アルバム同様ヒップホップ色を取り混ぜていたようだし。だから今年のBlue Note Fes のステージも、その延長戦になると思っていた。

ところがフタを開けてビックリ。元気一杯のヴァーダイン・ホワイト、存在感の乏しいラルフ・ジョンはいつものままだが、ちょっと元気をなくしていたフィリップ Sr.が、 俄然復調していたのだ。さすがに黄金のファルセットはキツそうで、ハイライトの<Reasons>は多少歌いやすいようにリ・アレンジされていたけれど、ほとんどの曲で自らリード・ヴォーカルを取り、息子にはあまりマイクを渡さない。途中、今年亡くなったばかりのモーリス・トリビュート・コーナーが新たに設けられていたが、もしかして彼の死がフィリップSr.の奮起を促したのだろうか。フィリップ Sr.がカリンバを弾くシーンは以前も見られたが、とにかく彼の気概が伝わって来るステージだった。<Faces>でスタートするショウ自体の構成も、前に比べてコンパクトにまとまって、濃縮感が強くなった。80'sブギーが受けている風潮を反映してか、若手が後退してストリート色が薄まり、その分ディスコ色が復活してヒット曲満載のパッケージ・ショウみたいになった。それでもセットリストはともかく、実際のビート感覚は懐メロ的ではなく、やはり「今」を感じさせるもの。 “我が道”を行かず 、時流を巧みに取り込んでシグネイチャー・スタイルと合体させるのが、今のアースの渡世術なのだろう。そんなコトを思っていると、終盤でマーカス飛び入り。まったくスタイルが異なるヴァーダインとのベース・バトルに、ヤンヤの喝采が贈られていました。シメは<September>と<Let's Groove>、そしてアンコールでは日本向けサーヴィスと思しき<Fantasy>、そしてようやくココでの<In The Stone>。

2年連続で足を運んだ BlueNote Jazz Fesだが、所馬的にも内容的にもエルダー層に優しく、雰囲気もナイス。ロック系夏フェスは、やはり若者中心に構成が組まれているため、観たいアーティストがいてもチョッと足が遠のいてしまう。そのクセ、ロートル・ファン向けの良質ロック・フェスがないのが難点。10年前のウドー・ミュージック・フェスがトラウマなのかも知れないが、アレを反面教師に、なんとか実現してもらいたいぞ。