beatles_live
昨日のレイト・ショーで観てきました、ビートルズのライヴ・ドキュメンタリー映画『EIGHT DAYS A WEEK』。サブ・タイトルに “The Touring Years” とあるように、ビートルズがライヴ・バンドだった時代にフォーカスした作品。観るとかなり目まぐるしい…、というか、テンポ感の速い映画だったが、そのスピード感がそのまま彼らが駆け抜けた怒涛の出世劇だったのだと思う。

かなり早い時期からバンバン名曲を生み出していたジョンとポールながら、本当の自我の萌出は、やはり『HELP』からだったと言える。それが『RUBBER SOUL』で本格化し、『REVOLVER』で一気に飛躍。ただそれと入れ替わるように、4人の中にライヴ活動への不満や疑問が膨らんできて…。その気持ちを逸早く表明したのがジョージというのも、その後の彼の動きに照らせば、なるほど、と思える。

かくいうカナザワ、実は大学の卒論のテーマがビートルズ。専攻が社会学だったので、彼らを取り巻いた状況を、社会現象として考察したのだ。さすがにタイトルはもう忘れてしまったが、音楽を聴くことは単なる余暇の楽しみではなく、ファッションやカルチャーといった社会の動きに結びついている、というコトをビートルズから読み解く、そんな内容だった。音楽の素晴らしさで若い聴衆を惹き付けただけでなく、同世代が内面に持っていた主義・主張や社会に対する疑問を代弁する、そういう役割を彼らが担ったからこそ、あれだけのビッグな存在になったのだと思う。

映画の中では、米国南部にはびこる人種差別に反旗を翻した件が出てくるけど、その原点は彼らが初めて米国を訪れた時に、みんなが傾倒していた黒人音楽が本場アメリカでは軽く扱われていたことを不思議に思ったことが原点だった。ある意味、英国人だからこその疑問だっただろう。そしてその英国では、人種問題の代わりに階級制度を痛烈に皮肉っている。
「安い席の人は拍手を、高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らしてください」
これは王室主催の演奏会に初めてロック・バンドとして招待された時、ジョンがユーモアを込めて発言したもの。その日のシネコンには若いファンもチラホラ見かけたけれど、単に音楽だけでなく、そうしたビートルズのスタンス、当時の社会や文化的背景にも目を配って欲しいと思う。

それにしても驚いたのは、ライヴ会場での嬌声の凄まじさ。今回リマスターされたCDは、昔の初版アナログに比べてずいぶん聴きやすくなっていたけれど、映像では逆に女の子たちの悲鳴を強調していたようである。もっとも、メンバーたちは自分たちの音が聴こえなかった、と言われるが、まぁそれは方便で、それなりには聴こえていたはず。でなきゃ、サスガにあの演奏力は保てない。

そしてラストに登場する、アップルでのルーフ・トップ・コンサートの模様。レストアされた画像の鮮明さに目を見張ったが、あれは果たして、映画『LET IT BE』再公開へ向けてのノロシとなるのだろうか。