kansas 016
もう1枚、28日に発売されたカナザワ解説担当の作品は、何と16年ぶりとなるカンサスのニュー・アルバム『暗黙の序曲(THE PRELUDE IMPLICIT)』。実はカナザワがプログレ好きであることを知ってるA&R氏が、以前カンサスの紙ジャケ・リイシューの時にライナー執筆を振ってきて、今回もまた!という流れになったのだ。でも内容が分かっているカタログ再発と完全な新作とでは、解説の重要度やプレッシャーも違う。分かりやすく言えば、内容を知らないだけに今イチだったらどう書く…?、AOR系ならどうにでもかわせるが専門外だとねぇ…、というワケだ。

でもこのカンサス新作は、心配ご無用。お世辞抜きで、とんでもなく素晴らしかった。それこそ、全盛期の76年作『LEFTOVERTURE(永遠の序曲)』、77年作『POINT OF NO RETUREN(暗黒への曳航)』あたりと比べても、まったく遜色がないくらいに。そりゃあ<Carry On Wayward Son(伝承)>とか<Dust in the Wind>のようなシングル・ヒットは望めないかもしれない。でもプログレっぽさも聴きやすさも程々に入っているので作品としてバランスが良く、アルバム・トータルで見て極めて完成度が高いのだ。執筆依頼をもらった時、「デキはどう?」「すごく良いですヨ」と言われていたけど、その時の自分の予測はイイ方向に大きく裏切られた。

83年に一度解散。3年後の86年にスティーヴ・ウォルシュが復帰し、ギターにはスティーヴ・モーズを迎えて活動再開。直後にチョッとしたヒットはあったものの、かつての勢いを取り戻せぬまま、ジリジリと後退を余儀なくされた。00年には “20年ぶりにオリジナル・ラインナップが結集” という触れ込みで『SOMEWHERE TO ELSEWHERE』を発表。が蓋を開けてみれば、結成メンバーが融和したとは言い難く、ツアーも行われず終い。それでも11年の第2回プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァルでは堂々のステージを展開したし、13年に開催されたデビュー40周年のアニヴァーサリー・ライヴでは、オリジナル・メンバー:ケリー・リヴグレン(g,kyd)とデイヴ・ホープ(b)の参加に加えてオーケストラ共演などもあり、新旧ファンを魅了したと伝えられる。

ところがそのあと、看板シンガー/Kydのウォルシュが2度目の脱退。それ故この新作にも不安が隠せなかったが、結果的にこのメンバー・チェンジが吉と出た。後任は、元シューティング・スターのロニー・プラット(kyd,vo)と、現ベースのビリー・グリアの外バン:セヴンス・キーに所属するデヴィッド・マニオン(kyd, vo)+ギタリストのザック・リズヴィ。これがイイ意味でリフレッシュになったようで、ゆったりしたスケールの中にもくっきりメリハリのついたアレンジ、洗練されたハーモニーが堪能できる。新しいメンバー構成も興味深く、2人のオリジナル・メンバーはまとめ役に徹するバイ・プレイヤー、再結成時からの2人は脇役的存在、そして新加入3人がフロントに立ってサウンドを牽引していくラインナップ。それがこの新生カンサスに絶妙なパワー・バランスをもたらしたと言える。

黄金期の代表曲を書いたケリー・リヴグレンは、グループ脱退後も外から楽曲提供していたけれど、今作はほとんどの楽曲が現行メンバーのペン。唯一、ウォルシュやグリアとストリーツを組んでいたマイク・スラマー(元シティ・ボーイ)が共作者としてクレジットされている。近々『LEFTOVERTURE』40周記念の全曲再現ライヴ・ツアーの計画があり、そのステージではこの新作の楽曲も披露されるらしいが、それが日本へ来たら絶対観に行かなくてはと、今から鼻息を荒くしている。